ギルバッハ レファレンスSL咬合器とは
ギルバッハ レファレンスSL咬合器は、上下の歯の模型を取り付け、検査で測ったその方の値を設定して、顎の位置と動き、噛み合わせを模型の上で再現する装置です。
14の診査項目の中では、「静的顎運動の診査」として行います。
咬合器(こうごうき)は、顎の代わりに、上下の歯の模型を開け閉めしたり、前後左右に動かしたりするための器具です。
レファレンスSL咬合器は、その中でも、顎関節にあたる部分の傾きなどを、その方の値に合わせて変えられる「全調節性」の咬合器です。
レファレンスSL咬合器のしくみ
レファレンスSL咬合器の主なしくみを、製造元(GAMMA 社)の説明をもとにまとめます。
| 部分 | しくみ(製造元の説明) |
|---|---|
| 顎関節にあたる部分 | 球ではなく、顎関節の回転の軸(蝶番軸)の考え方にもとづく軸の形をしています。軸が滑る部品の傾きを、前へ動く道筋と、横へ動く道筋のそれぞれについて、交換できる部品で合わせます |
| 上の歯の模型の取り付け | 顎関節の回転の軸と、選んだ基準の面に対する位置に合わせて取り付けます |
| 顎関節の位置を設定する装置 | 顎関節の位置を、前後・左右・上下の3つの方向に、数値で合わせて設定します。キャディアックスで決めた位置も、そのまま設定できます |
| 前歯の誘導の板 | 歯の形を設計するときに、前歯が下あごの動きを導く角度を設定します。スラビチェック教授の考え方による、順番に誘導するための板もあります |
顎関節にあたる部分の傾きの値は、一般に、顎関節の動きを記録する装置の値から求め、咬合器に設定します。
当院では、その記録にキャディアックスを使います。
当院で設定する値
当院では、咬合器に次のような値を設定します。
| 設定する値 | もとにする記録 |
|---|---|
| 顎関節が前へ動くときの道筋の角度(前方矢状窩路角) | キャディアックス |
| 治療で目指す下あごの位置(治療顎位) | 顎関節の3次元の記録などから算出 |
| 一本ずつの歯の斜面の角度(咬頭傾斜角)と、その方向・距離 | 顎関節の記録と治療顎位から算出 |
| 歯が下あごの動きを導く角度(ガイダンスの角度) | 事前に計測、または算出 |
写真の表は、歯ごとの角度を数値で並べたものです。
骨格も顎の動きも一人ひとり異なるため、その方の値を一つずつ設定します。
歯ごとの角度の決め方は、シーケンシャルオクルージョンのページでご紹介しています。
基準の面をそろえる
骨格・顎関節・歯の値は、同じ基準の面(アキシス・オルビタール平面)から測ります。
そのため、測った値を、そのまま咬合器の上に表すことができます。
基準の面については、ラテラルセファロ分析のページでご説明しています。
顎関節の位置を、3次元で設定する
顎関節は、3次元に動きます。
そのため、治療で目指す顎関節の位置も、前後・左右・上下の3つの方向で決めます。
当院では、咬合器にコンダイラー リポジショニング バリエータという装置を取り付けます。
検査の値から算出した顎関節の目標の位置を、模型の上に設定するための装置です(冒頭の写真)。
当院がレファレンスSL咬合器を使う理由
測った値を、模型の上で再現するため
口の中をのぞいても、左右の顎関節の動き方までは見えません。
そこで当院では、顎関節の動き、骨格、一本ずつの歯、寝ている間の歯の接触を記録し、その値を咬合器に設定して、模型の上で顎の動きと噛み合わせを再現します。
「まず測る。そして、測った値を模型の上で再現する」ことを大切にしています。
一人ひとりの値を、そのまま設定したいから
顎の骨格も、顎の動き方も、人によって違います。
その方から測った値を一つずつ設定できる咬合器を使い、その方の顎の動きに合った噛み合わせを考えます。
顎関節の位置を、座標で捉えたいから
顎関節とその周りの組織にかかる力の向きは、奥歯の噛み合わせの影響を受けます。
そのため当院では、顎関節の位置を前後・左右・上下の座標で捉え、奥歯の噛み合わせとの関係を、模型の上で確かめます。
一本ずつの歯に、角度を与えるため
歯には、一本ずつ違う角度が求められます。
そのため当院では、歯を一本ずつ外せる分割模型を咬合器に取り付け、歯ごとに角度を与えます。
当院での実際
測ってから、形にするまで
咬合器は、次の流れの中で使います。
- 顎関節の動きを測る:キャディアックスで、力を抜いた状態の顎関節の動きを記録します。入れ歯をつくるときは、口内法のゴシックアーチトレーシングで、噛みしめた状態の下あごの動きの跡も記録します。
- 骨格と歯を測る:ラテラルセファロ分析で骨格を、分割模型と咬合平面の計測で、一本ずつの歯と噛む面の傾きを調べます。
- 寝ている間の歯の接触を見る:必要に応じて、ブラックスチェッカーを使います。
- 模型の上で再現する:測った値と、そこから算出した値を咬合器に設定し、上下の模型を取り付けて、顎の位置と動き、噛み合わせを確かめます。
- 形にして、もう一度測る:模型の上で決めた位置や角度を、装置・仮歯・入れ歯・かぶせ物の形にします。口の中に入れたあとも、顎の動きや歯の接触を記録し直して確かめます。
模型の上で決めたものを、口の中へ移す
顎関節症の装置
顎関節症では、治療で目指す顎の位置を、メタルオーバーレイ・メタルスプリント・仮歯などの装置に表します。
これらは、その位置と噛み合わせを、実際の口の中で確かめるための装置です。
装置の形は、顎関節の3次元の記録・骨格・噛み合わせの情報を合わせて、咬合器の上で決めます。
矯正
矯正でも、咬合器での噛み合わせの分析を、キャディアックスの記録や骨格の分析と合わせて、治療を進める材料にします。
かぶせ物
多くの歯をまとめてかぶせ物で整えるときは、顎関節の道筋の角度や、一本ずつの歯が下あごの動きを導く角度を、製作の前に測るか算出し、この咬合器で形を決めます。
入れ歯
入れ歯では、人工歯をどこに並べ、噛む面をどの傾きにするかを、咬合器の上で決めます。
部分入れ歯でも、咬合器の上で組み立てた噛み合わせが、口の中でも合うことを目指して設計します。
人工歯の並べ方は、人工歯の排列のページでご紹介しています。
レファレンスSL咬合器でできること・できないこと
咬合器でできること
- 検査で測ったその方の値を、上下の歯の模型に設定する
- 顎の位置や動きと、歯の当たり方の関係を、模型の上で確かめる
- 治療で目指す顎関節の位置を、3つの方向で設定する
- 一本ずつの歯の角度を決める
- 模型の上で決めた位置や形を、仮歯・装置・入れ歯・かぶせ物へ移す
できないこと・当院での補い方
| できないこと | 当院での補い方 |
|---|---|
| 顎関節の動きを測ること | キャディアックス |
| 噛みしめた状態の下あごの動きの跡を測ること | 口内法のゴシックアーチトレーシング(入れ歯をつくるとき) |
| 骨格を測ること | ラテラルセファロ分析 |
| 寝ている間の歯の接触を知ること | ブラックスチェッカー |
| 入れ歯を支える歯茎(粘膜)の、力による形の変化を知ること | 粘膜の記録 |
| 模型の上で決めた噛み合わせが、その方の口の中で合うかを確かめること | 仮歯や装置を使いながら確かめる(仮歯・仮義歯) |
よくあるご質問
- 咬合器は、口の中に入れて使うものですか?
いいえ。上下の歯の模型を取り付けて使う器具です。
咬合器の上で決めた位置や形を、仮歯や装置に移して、口の中で確かめます。
- 咬合器には、どのような値を設定しますか?
顎関節が前へ動くときの道筋の角度、治療で目指す下あごの位置、一本ずつの歯の角度などです。
キャディアックスやラテラルセファロ分析などの記録から、測るか算出した値を使います。
- コンダイラー リポジショニング バリエータは、何をする装置ですか?
検査の値から算出した、治療で目指す顎関節の位置を、前後・左右・上下の3つの方向で、模型の上に設定する装置です。
ギルバッハ レファレンスSL咬合器に取り付けて使います。
- 咬合器の上で作れば、口の中での調整はいりませんか?
装着したあとも、お口の状態を見ながら、必要に応じて調整します。
模型の上で決めた噛み合わせが合っているかは、仮歯や装置を使いながら確かめます。
- 入れ歯やかぶせ物をつくるときにも使いますか?
はい。人工歯を並べる位置や噛む面の傾き、かぶせ物の一本ずつの歯の角度を、咬合器の上で決めます。
関連する技術・治療
- キャディアックス(Cadiax)
- ラテラルセファロ分析
- シーケンシャルオクルージョン(順次離開咬合)
- ワックスアップ
- 使用している技術の一覧
- 顎関節症・歯をなるべく抜かない矯正歯科:検査
- 入れ歯(精密義歯):検査
- 治療前の徹底した診断(14の診査項目)
参考にした資料
一般的な説明(咬合器のしくみ・顎関節の位置を設定する装置)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。
- GAMMA Dental「Articulation」(製造元・英語)
- GAMMA Dental「Instrumental diagnostics」(製造元・英語)
- GAMMA Dental「Digital Diagnostic」(製造元・英語)
- Ahangari AH, et al. Evaluation of the Cadiax Compact II accuracy in recording preadjusted condylar inclinations on fully adjustable articulator. J Contemp Dent Pract. 2012;13(4):504-508(英語)
- Lewandowska A, et al. Sagittal Condylar Inclination and Transversal Condylar Inclination in Different Skeletal Classes. J Clin Med. 2022;11(9):2664(英語)
相談・お問い合わせ
医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
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診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00
初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。
噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。









