キャディアックスとは

キャディアックス(Cadiax)は、下あごを動かしたときの左右の顎関節の動きを、両側同時に、時間の経過とともに3次元で記録する電子式の装置です。

当院の診査項目では、「動的顎運動の診査」にあたります。

下あごの動きを、顎関節のところで記録する方法は、一般にコンディログラフィやアキシオグラフィと呼ばれます。

キャディアックスは、この記録を電子式で行う装置で、オーストリアの GAMMA Dental(ガンマ・デンタル)社が製造しています。

医療機器としての一般的な名前は「歯科用下顎運動測定器」です。

キャディアックスで顎の動きを記録しているところ。頭と下あごに記録用の器具が付いている
キャディアックスによる顎の動きの記録

開発の背景

キャディアックスにつながる研究には、ルドルフ・スラビチェック教授(1928〜2022年)が関わっています。

教授は、ウィーン大学の歯科病院に補綴科を立ち上げ、1978年から1997年まで率いました。

教授は1970年代の終わりから、下あごの動きを記録する「アキシオグラフィ」の研究を始め、ほかの研究者とともに装置の開発に加わりました。

はじめの装置は機械式で、動きの形は残せても、時間の経過までは記録できませんでした。

その後、時間の経過も記録できる電子式になり、さらにコンピューターで記録・保存・解析する形へ進みました。

教授は、この記録と、横顔のX線写真(ラテラルセファロ)の分析を重ね合わせて見る方法も取り入れました。

教授は1988年のインタビューで、この記録は、はじめは咬合器の設定のためだけに使われていたが、下あごの動きを図で示す方法として役立つことが分かった、と述べています。

院長は、2000年にスラビチェック教授から、義歯設計の考え方を直接学びました。

2003年から2016年までは、教授と神奈川歯科大学の佐藤貞雄教授の研究に加わりました。

キャディアックスのしくみ

製造元の説明をもとに、しくみを4つの段階に分けてご紹介します。

  1. 蝶番軸(ちょうばんじく)を探す:下あごを開け閉めするときの回転の中心を、蝶番軸(ヒンジアキシス)といいます。口をゆっくり開けていただき、その動きから蝶番軸の位置を計算して、下あごの器具をその位置に合わせます。
  2. 器具を付ける:頭に付ける器具(ボウ)と、下あごに付ける器具を使います。下あごの器具は、口の中で歯に付ける部品(クラッチ)で支えます。顎関節の近くに記録用の板(フラッグ)を置き、動きを読み取る棒(スタイラス)をそこに当てます。
  3. 顎を動かして記録する:左右の顎関節の動きを、同時に、時間の経過とともに3次元で記録します。
  4. 画面で見て、値を計算する:記録は、左右それぞれの軌跡(通った道筋)の図として表示され、咬合器に設定するための値も計算されます。

最初に蝶番軸を探すのは、下あごの動きが、回転と滑り(移動)の組み合わせだからです。

蝶番軸を基準にして、この組み合わさった動きを記録します。

写真でも、頭の器具、下あごの器具、顎関節の近くの黒い板(「CADIAX」の表示)、動きを読み取る棒が分かります。

当院の記録では、精度が0.01mm、情報を集める頻度が1秒間に500回(500Hz)です。

記録する動き

一般に、キャディアックスでは次のような動きを記録します。

動き記録されるもの(一般的な説明)
口を大きく開けて、閉じる回転と、関節の中での滑り(移動)が組み合わさった道筋
下あごを前へ出す顎関節が前へ動く道筋。横から見た傾き(矢状方向の顆路の傾き)を求めます
下あごを左右へ動かす動かした側と反対側の顎関節が、内側へ動く道筋。上から見た向き(横方向の顆路の傾き・ベネット角)を求めます

顆路(かろ)とは、顎関節の下あご側の部分(下顎頭)が、動くときに通る道筋のことです。

製造元の解析ソフトは、動き始めから3mm・5mm・10mmの点で、この傾きの値を計算します。

当院で記録するのは、顎の力を抜いた(脱力した)状態での動きです。

記録画面の見方

キャディアックスの記録画面。右(Right)と左(Left)に分かれた方眼の上に、顎関節の動きの軌跡が線で表示されている
キャディアックスの記録画面(左右の顎関節の動きの軌跡)

画面の上には「Right(右)」「Left(左)」の表示があり、左右の顎関節の記録が並んでいます。

画面には X・Y・Z の3つの方向の目盛りがあり、大きな方眼は X と Z、上の細長い方眼は X と Y、両端の縦長の方眼は Y と Z で描かれています。

左右の顎関節が通った軌跡が、それぞれの方眼に線で表示されます。

写真は、ある時点の1回分の記録画面です。

製造元は、こうした図を、説明や患者さんへの情報提供にも使えるとしています。

当院がキャディアックスを使う理由

骨格も、顎の動きも、一人ひとり違うから

顎の骨格や動き方には、一人ひとり違いがあります。

当院では、その方から記録した値をもとに、噛み合わせを考えます。

見た目では、顎関節の動きは分からないから

歯並びがきれいに見えても、顎関節の動きと噛み合わせが合っているとは限りません。

顎関節の動きは、口の中を見ても分からないため、記録して数値で確かめます。

顎関節の動きと、噛み合わせを合わせたいから

当院の顎関節症の治療は、顎関節の3次元の動きと、噛み合わせの働きを一致させることを目指しています。

そのためには、まず顎関節がどう動いているかを知る必要があります。

治療で目指す下あごの位置(当院では「治療顎位」と呼んでいます)も、顎関節の3次元の情報をもとに算出します。

入れ歯でも、矯正でも、診査の方法は同じだから

入れ歯と矯正と顎関節症の治療では、最後にできあがるものが違います。

それでも、顎関節の動きと骨格を測ってから噛み合わせを考える、という診査の方法は同じです。

同じ方法で、記録し直せるから

装置を入れたあと、治療の途中や終わりにも、同じ方法で顎の動きを記録し直せます。

記録どうしを比べて、動きがどう変わったかを確かめられます。

記録を、形にして使うため

記録した値は、咬合器に設定して、装置・仮歯・入れ歯・かぶせ物の形にします。

形にできて、はじめて治療に使える記録になる、というのが院長の考えです。

当院での実際

検査から、形にするまで

キャディアックスは、次のような順番で使います。

  1. 初診コンサルテーションで、お悩みとこれまでの治療をお聞きし、お口の状態を確かめて、必要な検査をご説明します。
  2. 詳しい検査(料金表の「矯正検査(噛み合わせの検査)」、2〜3回の通院が目安)の中で、キャディアックスで顎関節の動きを記録します。
  3. 記録のあいだは、頭と下あごに記録用の器具を付け、顎の力を抜いて、顎を動かしていただきます。
  4. 同じ時期に、ラテラルセファロ分析(骨格)、歯型・分割模型(一本ずつの歯)、ブラックスチェッカー(寝ている間の歯の接触)などを、必要に応じて行います。
  5. 記録と検査の結果から、治療顎位や咬合器の設定値を算出し、ギルバッハ レファレンスSL咬合器に設定します。
  6. 咬合器の上で決めた位置をもとに、装置・仮歯・入れ歯・かぶせ物をつくります。
  7. 装置を入れたあとも、途中や終わりに、同じ方法で記録し直して確かめます。

検査の組み合わせは、一人ひとりの症状やお口の状態に合わせて決めます。

咬合器に設定する値について詳しくは、ギルバッハ レファレンスSL咬合器のページをご覧ください。

顎関節症

顎関節症の診査では、左右の顎関節の通り道と、噛み合わせの位置のずれを確かめます。

記録から算出した治療顎位は、メタルスプリントやメタルオーバーレイの形にして、口の中で確かめます。

初期治療では、この位置に合わせて顎の位置を変える装置(顎位変更装置)を使うこともあります。

メタルスプリントには、顎関節の3次元の記録に、骨格と噛み合わせの情報を合わせて、その方の顎の位置を表します。

矯正歯科

矯正では、顎関節の動きを3次元で分析し、そのデータを、歯を3次元的に動かす計画に使います。

キャディアックスの記録、ラテラルセファロ分析、咬合器での分析の3つを合わせて、治療を進めます。

黒と灰色の模様の石の上に置いた、ループを曲げ込んだ矯正用のワイヤー
矯正用のワイヤー(MEAW)

入れ歯

上下の総入れ歯
上下の総入れ歯

歯がない方でも、歯のある方と同じように、顎関節の動きを記録できます。

総入れ歯では、キャディアックスの記録から、人工歯の山の斜面の角度(咬頭傾斜角)を決めます。

入れ歯では、噛みしめた状態の記録と粘膜の記録も合わせます(下の「口内法のゴシックアーチトレーシング」)。

仮歯・かぶせ物

上下の歯列の形をした仮歯
仮歯

仮歯は、ラテラルセファロ分析やキャディアックスの記録をもとに作ります。

使っていただきながら、その位置や形が合っているかを確かめる段階です。

多くの歯をまとめてかぶせ物で整えるときも、顎関節の3次元の情報をもとに、咬合器で形を決めます。

寝ている間に使うマウスピース

寝ている間に使う白いマウスピース
寝ている間に使うマウスピース(ピーク材)

夜間の噛み合わせのためのマウスピースも、キャディアックスと咬合器で調べたうえで、コンピューター上で形を設計します。

素材はピーク材です。

歯周病

歯周病の検査でも、必要に応じてキャディアックスで噛み合わせを調べ、治療計画を考えます。

ほかの検査との組み合わせ

キャディアックスの記録だけで方針を決めることはありません。

骨格(ラテラルセファロ分析)、咬合器での分析、夜間の歯の接触などと合わせて考えます。

症状によっては、瞳孔反射などの自律神経の反射の検査も合わせて行います。

ラテラルセファロ(横顔のX線写真)の分析画面。骨格の上に分析の線と記号が描かれている
ラテラルセファロの分析画面
瞳孔反射の記録画面。光を当てたときの瞳孔の直径の変化の曲線と、測定値
瞳孔反射の記録画面

キャディアックスで分かること・分からないこと

キャディアックスで分かること

  • 力を抜いて顎を動かしたときの、左右の顎関節の動き(3次元の軌跡)
  • 左右の顎関節が、同じ時間の中でどう動いたか
  • 顎関節が前へ・左右へ動く道筋の傾き(咬合器に設定する値)
  • 噛み合わせの位置のずれ
  • 関節の音(クリック)があるかどうか
  • 治療顎位を算出するための情報
  • 処置の前・途中・後で、動きがどう変わったか

分からないこと・当院での補い方

分からないこと当院での補い方
噛みしめた状態の下あごの動きの跡口内法のゴシックアーチトレーシング(入れ歯をつくるとき)
骨格(上下の顎の位置関係・顔の高さ)ラテラルセファロ分析
一本ずつの歯の向きや傾き分割模型
噛む面の傾き咬合平面の計測
寝ている間の歯の接触ブラックスチェッカー
入れ歯を支える粘膜の形力を抜いたとき・力が入ったとき・その中間の粘膜の記録
咬合器の上で決めた位置が、その方の口の中で合うか仮歯や装置を使いながら確かめる
頭痛・肩こりなどの症状の原因顎の記録だけでは決めません。医科など、歯科以外での評価が役立つこともあります

また、キャディアックスは、器具を蝶番軸に合わせるなど、扱いに技術が要る装置です。

学術文献でも、扱いが難しいことが日常的な使用を妨げうる点として挙げられています。

口内法のゴシックアーチトレーシング:噛みしめた状態の動きを補う

キャディアックスの記録は、顎の力を抜いた状態の動きに限られます。

入れ歯をつくるときは、噛みしめた(最大の筋力に近い)状態での下あごの動きの跡を、口内法のゴシックアーチトレーシングで記録します。

2つの記録に粘膜の記録を合わせて、入れ歯の形を考えます。

詳しく → 口内法のゴシックアーチトレーシング

よくあるご質問

キャディアックスでは、どのような動きを記録しますか?

一般には、口の開け閉め、下あごを前へ出す動き、左右へ動かす動きを記録します。

当院では、顎の力を抜いた状態での、左右の顎関節の動きを3次元で記録します。

噛みしめた状態の動きも記録できますか?

キャディアックスでは記録できません。

入れ歯をつくるときは、口内法のゴシックアーチトレーシングで、噛みしめた状態の動きを記録します。

キャディアックスの記録だけで、治療の方針を決めるのですか?

いいえ。キャディアックスは、顎関節の動きを知るための記録の一つです。

ラテラルセファロ分析による骨格の情報や、咬合器での噛み合わせの分析と合わせて考えます。

歯がなくても記録できますか?

はい。歯がない方でも、顎関節の動きを記録できます。

総入れ歯をつくるときは、この記録を、骨格や粘膜の記録と合わせて、人工歯の位置や角度を考えます。

どの検査に含まれていますか?何回くらい通いますか?

料金表の「矯正検査(噛み合わせの検査)」の診査項目の一つ(動的顎運動の診査)です。

矯正検査は、全体で2〜3回の通院が目安です。キャディアックスだけの回数ではありません。

記録した画面は見せてもらえますか?

はい。当院では、検査で得た情報を患者さんにお伝えしています。

記録の図が何を表しているかも、あわせてご説明します。

参考にした資料

一般的な説明(キャディアックスのしくみ・開発の背景)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

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