人工歯の排列とは
人工歯の排列(はいれつ)は、入れ歯の人工の歯を、どの位置に、どの向きと角度で並べるかを決めて、並べていく工程です。
当院では、骨格の分析と顎関節の動きの記録から、その方の値を出して並べます。
総入れ歯では、すべての歯を人工歯で補います。
部分入れ歯では、失った歯の分を人工歯で補います。
どちらも、人工歯の位置と角度が、入れ歯の噛み合わせになります。
人工歯の排列のしくみ
並べるために使う記録
院長は、入れ歯をつくるときにも、最低限、次のような客観的な記録が必要だと考えています。
- 下顔面高(LFH):顔の下の部分の高さ(ラテラルセファロ分析)
- APDI:下あごの前後の位置(ラテラルセファロ分析)
- 前方矢状窩路角(HCI):下あごを前へ出すときの、顎関節の通り道の傾き
- 力を抜いた状態の、顎関節の3次元の動き(キャディアックス)
- 噛みしめた状態の、顎関節の動き(口内法のゴシックアーチトレーシング)
記録から決めること
人工歯を並べる前に、次の3つの値を決めます。
| 決めること | もとにする記録 |
|---|---|
| 上下のあごの間の高さ(咬合高径) | 骨格の分析(ラテラルセファロ分析) |
| 噛む面の傾き(咬合平面) | 骨格の分析(ラテラルセファロ分析) |
| 歯の山の斜面の角度(咬頭傾斜角) | 顎関節の動きの記録(キャディアックス) |
咬合高径は、一般に、上下の歯が噛み合っているときの、上あごと下あごの決まった2点の間の距離をいいます。
咬合平面は、歯の噛む面の並びがつくる面です。一般には、下の真ん中の前歯の間の点と、下の左右の第二大臼歯(前から7番目の奥歯)の、頬側の後ろの山の先を含む面として決めます。
咬頭傾斜角は、歯の噛む面にある山(咬頭)の、斜面の角度です。
並べるまでの流れ
- 骨格の分析と顎関節の記録から、咬合高径・咬合平面・咬頭傾斜角などの値を出します。
- 出した値を、ギルバッハ レファレンスSL咬合器の設定に使います。咬合器は、上下の模型を取り付けて、顎の位置と動きを模型の上で再現する装置です。
- 一本ずつの歯について、目標とする角度を算出します(写真は、その値を並べた設定表の例です)。
- 算出した値に合わせて、模型の上で人工歯を並べます。
目標とする噛み合わせ
当院が入れ歯に与える噛み合わせは、天然の歯と同じ考え方にもとづきます。
写真の総入れ歯には、佐藤–スラビチェックの考え方に沿って、「順次離開咬合」と呼ぶ噛み合わせを与えています。
この噛み合わせの考え方は、シーケンシャルオクルージョンのページでご紹介しています。
当院が検査の値から人工歯を排列する理由
入れ歯でも、噛み合わせの考え方は天然の歯と同じだから
院長は、総入れ歯だけの特別な噛み合わせがあるとは考えていません。
入れ歯も、矯正も、顎関節症の治療も、診査と診断の方法は同じです。
当院では、矯正から総入れ歯まで、すべての年齢の方の噛み合わせを、共通の理論で考えます。
そのため、総入れ歯の人工歯の並べ方と、矯正のワイヤーの曲げ方には、共通する点が多くあります。
骨格も、顎の動きも、一人ひとり違うから
顎関節症は、歯が一本もない方にも起こります。
骨格も顎の動きも、一人ひとり違います。
当院では、その方から記録した値をもとに、一本ずつの歯の角度を決めます。
歯の並びにも、個性があるから
目標を、あらかじめ数値で示せるから
記録を取った時点で、目標とする噛み合わせが、おおよそ数値で示されます。
そのため製作では、目標の値と、実際にできあがる形とのずれを補正することに力を注ぎます。
当院での実際
入れ歯づくりのどの段階で行うか
人工歯の排列は、検査のあと、入れ歯を形にしていく段階で行います。
部分入れ歯でも、同じ考え方で噛み合わせを考えます。
- 詳しい検査で、骨格と顎関節の動きを記録します(ラテラルセファロ分析・キャディアックス・口内法のゴシックアーチトレーシング)。
- 入れ歯を支える歯茎の形も記録します(粘膜の記録)。
- 記録から値を出し、咬合器に設定して、人工歯を並べます。
- 並べた形をもとに仮義歯をつくり、使っていただきながら、噛み合わせや見た目を確かめます(仮歯・仮義歯)。
- 確かめた内容をもとに、最終の入れ歯をつくります。
仮義歯で確かめる
仮義歯は、最終の入れ歯が役目を果たせるかどうかを確かめるための段階です。
形を変えられる素材でつくってあるため、使っていただきながら、形を整えることができます。
見た目について
前歯の形や並び、歯と歯肉の色は、見た目にかかわる所です。
当院では、患者さんと話し合いながら決めていきます。
歯肉にあたる部分には、血管の走り方や、歯肉の表面の細かな形も表します。
受け口の方の入れ歯
人工歯の排列でできること・できないこと
人工歯の排列でできること
- 骨格の分析から、上下のあごの間の高さ(咬合高径)と、噛む面の傾き(咬合平面)を決めて並べる
- 顎関節の記録から、一本ずつの歯の山の角度(咬頭傾斜角)を決めて並べる
- 天然の歯と同じ考え方の噛み合わせ(順次離開咬合)を与える
- その方の骨格に合わせた、個性のある並びにする
- 前歯の形や並び、色を、見た目のご希望と合わせて考える
できないこと・当院での補い方
| できないこと | 当院での補い方 |
|---|---|
| 数値の目標と、できあがりのずれを、なくしきること(体の適応の個人差や、噛み合わせ以外の要因による) | 仮義歯で確かめて整える(仮歯・仮義歯)。入れたあとも状態を確かめる |
| 入れ歯が歯茎の上で安定するかどうかを、歯の並びだけで決めること | 粘膜の記録 |
| 部分入れ歯で、支える歯にかかる力を整えること | 有限要素法にもとづく義歯設計 |
| 噛みしめた状態の顎の動きを、キャディアックスの記録から知ること | 口内法のゴシックアーチトレーシング |
よくあるご質問
- 人工歯の並べ方は、どの方も同じではないのですか?
同じではありません。
当院では、骨格の分析と顎関節の記録から、その方の値を出して、一本ずつの歯の位置と角度を決めます。
骨格に合った歯の並びは、一人ひとり違います。
- 見た目の希望は、伝えられますか?
はい。前歯の形や並び、歯と歯肉の色は、患者さんと話し合いながら決めます。
仮義歯の段階でも、見た目を確かめていただけます。
- 並べた歯の位置は、あとから変えられますか?
仮義歯は、形を変えられる素材でつくってあります。
使っていただきながら確かめ、その内容を最終の入れ歯に生かします。
最終の入れ歯を入れたあとも、状態を確かめ、必要に応じて調整します。
- 部分入れ歯でも、同じ考え方で並べるのですか?
はい。部分入れ歯でも、骨格と顎関節の記録から噛み合わせを考えます。
部分入れ歯では、あわせて、残っている歯にかかる力も考えて設計します(有限要素法にもとづく義歯設計)。
関連する技術・治療
参考にした資料
一般的な説明(用語の意味)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。
相談・お問い合わせ
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