ワックスアップとは

ワックスアップは、歯の模型の上にワックス(ろう)を盛って、かぶせ物や入れ歯、治療で使う装置の形をつくる工程です。

検査で分かったことを、まず目に見える形にする、設計の段階にあたります。

ワックスでつくった形を、そのまま口の中で使うことはありません。

鋳造で金属に置き換えたり、光で読み取ってジルコニアから削り出したりして、はじめて実際に使うものになります。

分割模型の上で、歯を一本ずつワックスで形づくった全顎のワックスアップ
分割模型の上の、全顎のワックスアップ

ワックスアップのしくみ

当院のワックスアップは、次のような順で進めます。

  1. 模型を用意する:歯型から模型をつくります。噛み合わせを細かく見るときは、歯を一本ずつ外せるように切り分けた「分割模型」を使います。
  2. 咬合器に取り付ける:上下の模型を咬合器(顎の位置や動きの関係を再現する装置)に取り付け、検査で測った値や、そこから計算した値を設定します。
  3. 一本ずつ形づくる:歯ごとに求められる高さや角度を考えながら、ワックスを盛って形をつくります。
  4. 働きを色で分ける:噛む面は、部分ごとの働きが区別できるよう、色を分けたワックスでつくることがあります。
  5. 別の素材に置き換える:できあがった形を、鋳造で金属に、または光で読み取ってジルコニアに置き換えます。
模型の上で、奥歯から前歯までを灰色のワックスで形づくったところ
模型の上のワックスアップ

色分けの意味

噛む面に色がついているのは、部分ごとの働きを区別して確かめるためです。

院長は、この色の区別を「機能の分解」と呼んでいます。

たとえば、下の写真の2本の奥歯のワックスでは、院長は色の意味を次のように書き添えています。

色表しているもの(かっこの中は院長の書き添え)
白上下の歯がいちばん深く噛み合う位置(咬頭嵌合位)で当たる点(ICP point)
青下あごが後ろへ動くときに、当たらないようにする所(Retrusive free area)
緑下あごが横へ動くときの誘導(Latrorusive guidance)
赤前方への誘導(Anterior guidance)

写真に書き入れた矢印で、下あごが後ろへ動く方向と距離を示すこともあります。

角度や、食べ物の流れを考えた形

顎関節の3次元の記録から取り出した角度を、ワックスアップに線で書き入れて確かめることがあります。

前歯の赤い部分は、噛んだ食べ物の流れを考えてつくる形です。

当院がワックスアップを使う理由

検査の情報は、形にしてはじめて使えるから

検査では、骨格、顎の動き、歯の位置や噛み合わせについて、多くの情報が得られます。

院長は、集めた情報を形に表せなければ、集めた意味がないと考えています。

ワックスアップは、その情報を形に表す最初の段階です。

言葉や紙だけでは、細部まで伝えきれないから

これだけ多くの情報を、口頭や1枚の書面だけで細部まで伝えるのは難しい、というのが院長の考えです。

当院では、院内の技工室で、検査の情報をワックスの形に直接表します。

歯は、一本ずつ形が違うから

同じ種類の歯でも、その方の状態によって、ふさわしい形はまったく異なります。

歯ごとに求められる高さや角度があるため、一本ずつ別々に角度を決めて形づくります。

一本の歯の模型の上につくった、紫色のワックスの奥歯
1本の歯のワックス(紫)

形に、働きを持たせたいから

当院では、形に働きを持たせることを、いちばん大切にしています。

体の状態を分析した結果を、まずワックスの形に表します。

1本の歯でも、すべての歯を治療するときでも、同じように力を注いで形をつくります。

当院での実際

ワックスアップを行う治療

  • かぶせ物(ジルコニア):ワックスでつくった形を光で読み取り、削り出します(ジルコニアのかぶせ物)。
  • 矯正・顎関節症の治療のあと:整えた噛み合わせを保つためのかぶせ物を、ワックスでデザインします。
  • 顎関節症の治療で使う金属の装置や、金属の仮歯:ワックスの形を、鋳造で金属に置き換えます(メタルオーバーレイ・仮歯・仮義歯)。
  • 入れ歯の金属のフレーム:鋳造の熱に耐える模型(耐火模型)の上でワックスアップします(鋳造)。

検査から、形にするまで

  1. 顎の動き(キャディアックス)や骨格(ラテラルセファロ分析)、歯の状態などを調べます。
  2. 検査の値を咬合器に設定し、模型を取り付けます。
  3. 模型の上で、一本ずつワックスで形をつくります。
  4. ワックスの形を、鋳造で金属に、または光で読み取ってジルコニアに置き換えます。
  5. できあがったものをお口に入れ、顎の動きを記録し直すなどして確かめます。

最終的なかぶせ物や入れ歯の前には、仮歯や仮の入れ歯で、形や噛み合わせを確かめることがあります。

仮歯のデータを口の中へ移すときも、咬合器の上で決めた形を、基準になる点をもとに正確に戻します。

ワックスアップは、模型の上で行う作業です。

ワックスアップでできること・できないこと

ワックスアップでできること

  • 検査で分かったことを、目に見える形にして確かめる
  • 歯を一本ずつ、それぞれの高さや角度を考えて形づくる
  • 噛む面の部分ごとの働きを、色で分けて確かめる
  • 1本のかぶせ物から、すべての歯、入れ歯のフレームまで、同じ考え方で設計する

できないこと・当院での補い方

ワックスは、形を決めるための材料です。

そのままお口で使うことはできず、別の素材に置き換えるときには、わずかな形のずれも生じます。

できないこと当院での補い方
ワックスのまま、お口の中で使うこと鋳造で金属に、または光で読み取ってジルコニアに置き換える
別の素材に置き換えるときの、形のずれをなくすこと鋳造・樹脂の縮みを見込んだ補正値を入れる(鋳造)。焼き固めたあとに形を補正する(ジルコニアのかぶせ物)
模型に表れない、顎の動きや骨格を知ることキャディアックスやラテラルセファロ分析の値を、咬合器に設定して使う
模型の上の形が、その方のお口で合うかを確かめること仮歯・仮義歯で使ってみて確かめ、装着したあとも記録し直す
細かな形を、肉眼だけで確かめること技工室の実体顕微鏡で拡大して確かめる

よくあるご質問

ワックスアップは、何のために行うのですか?

検査で分かったことを、かぶせ物や入れ歯、装置の形として表すためです。

ワックスで形を決めてから、金属やジルコニアに置き換えます。

ワックスに色がついているのはなぜですか?

噛む面の部分ごとの働きを区別して確かめるためです。

たとえば、上下の歯が噛み合う点、下あごが横や前へ動くときに動きを導く面などを、色で分けます。

1本のかぶせ物でも、ワックスアップをするのですか?

はい。ジルコニアのかぶせ物は、1本の歯でも、まずワックスで形をつくり、その形を光で読み取って削り出します。

このページにも、1本の歯のワックスアップの写真を載せています。

ワックスの形は、どうやって金属やジルコニアになるのですか?

金属にするときは、ワックスの形を鋳造で置き換えます。

ジルコニアにするときは、ワックスの形を光で読み取ってデータにし、CAD/CAMで削り出します。

ワックスアップは、どこで行っていますか?

院内の技工室で行っています。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

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