メタルオーバーレイとは

メタルオーバーレイは、検査から算出した「治療で目指す下あごの位置」と噛み合わせの情報を、歯の噛む面に重ねる金属の装置に表したものです。

ワックスで形を作り、鋳造(ちゅうぞう:型に溶かした金属を流し込み、同じ形の金属にすること)で金属に置き換えて、口の中の歯に装着します。

当院では、治療で目指す下あごの位置を「治療顎位(ちりょうがくい)」と呼んでいます。

メタルオーバーレイは、顎関節症の治療で、この治療顎位を口の中で確かめる段階に使う装置の一つです。

金属で作ったメタルオーバーレイ。歯の噛む面の形をした金属が、数本の歯の分つながっている
メタルオーバーレイ

いくつかの形と呼び方

院長の投稿やこれまでの説明には、次のような呼び方が出てきます。

  • 治療顎位付きメタルオーバーレイ:算出した治療顎位を表したもの
  • 咬合面メタルオーバーレイ:歯の噛む面(咬合面)に着けるもの。院長の研究で使う装置の呼び方でもあります
  • 可撤性(かてつせい)オーバーレイ:取り外しのできる形のもの
  • 乳歯のメタルオーバーレイ:乳歯と永久歯が混ざっている時期に、乳歯に着けるもの

メタルオーバーレイのしくみ

メタルオーバーレイは、検査の情報を、模型の上で形にしてから、口の中へ移すという順番で作ります。

  1. 検査で問題点を洗い出す:横顔のX線写真の分析(ラテラルセファロ分析)で骨格を、キャディアックスで顎関節の動きを、咬合器で噛み合わせを調べます。
  2. 治療顎位を算出する:顎関節の3次元(前後・左右・上下)の情報をもとに、治療で目指す下あごの位置を求めます。
  3. 咬合器に設定する:咬合器(上下の歯の模型を取り付けて、顎の位置や動きを再現する装置)に、算出した位置を設定します。
  4. ワックスで形を作る:その位置で噛むために足りない情報を、歯の模型の上に、ワックスで形作ります。
  5. 鋳造する:ワックスの形を、金属に置き換えます。
  6. 装着して確かめる:口の中の歯に装着し、症状と顎の動きを確かめ直します。

院長は、この流れを、検査で分かった情報を金属の形に「転写する」ことだと説明しています。

検査の値(入力)と、口の中に入る装置の形(出力)が途切れずにつながっていることを、大切にしています。

咬合器への設定について詳しくは、ギルバッハ レファレンスSL咬合器のページをご覧ください。

ギルバッハ レファレンスSL咬合器に、顎関節の位置を設定する装置と模型を取り付けたところ
咬合器と模型(顎関節の位置を設定する装置を付けたところ)

金属の形に表す情報

乳歯の奥歯2本の模型の上に、白・青・緑・赤に色分けしたワックスが盛られている
色分けしたワックス(乳歯の奥歯)

写真は、乳歯の奥歯に入れる情報を、色分けしたワックスで表したものです。

色ごとに、表す情報が決まっています。

色表す情報
白上下の歯がいちばん深く噛み合う位置(咬頭嵌合位)で、当たる点
青下あごが後ろへ下がるときに、歯がぶつからないよう空けておく範囲
緑下あごを横へ動かすときに、動きを導く面
赤下あごを前へ出すときに、動きを導く面

このように、歯ごとに、噛み合わせたときに当たる所と、下あごを動かしたときに導く所・当たらないようにする所を割り当てて、形を決めます。

順次誘導を与えたメタルオーバーレイ

咬合器の上で、上下の模型を噛み合わせた状態。奥歯にメタルオーバーレイが着いている
上下の模型と、奥歯のメタルオーバーレイ

下あごを横へ動かしたときに、後ろの歯から順に離れていくように導く噛み合わせを、シーケンシャルオクルージョン(順次誘導の噛み合わせ)といいます。

院長は、この導きを与えたメタルオーバーレイを「SOMOTR」と呼んでいます。

下あごを治療顎位に置いたうえで、後ろへ下がる動きと、横への動きを導く面を、メタルオーバーレイの形に与えます。

考え方について詳しくは、シーケンシャルオクルージョンのページをご覧ください。

当院がメタルオーバーレイを使う理由

顎関節の動きと、噛み合わせをそろえるため

当院では、顎関節症を、顎関節の3次元の動きと、歯の噛み合わせの働きがそろっていない状態としてとらえています。

そのため、検査で求めた下あごの位置を、実際の歯の上に表して確かめる装置が必要になります。

模型の上で決めた位置を、形のまま口の中へ移すため

当院では、咬合器の上で決めた位置を、口の中で確かめる段階を経てから、次の治療へ進みます。

メタルオーバーレイは、咬合器の上で決めた位置を金属の形に写し取り、その形のまま口の中へ移すための装置です。

足りない高さや形を、補うため

院長は、検査のデータをもとに、欠けている噛み合わせの働きを補っていく、と説明しています。

メタルオーバーレイは、歯の噛む面に金属を重ねて、足りない高さや形を補う装置です。

入れたあとも、同じ方法で確かめ直せるため

装着したあとも、症状の変化と、顎の動きを記録し直して確かめます。

治療のあとには、寝ている間の歯の接触も記録して、与えた形の働きが保たれているかを確かめます。

当院での実際

顎関節症の治療の中での順番

  1. 初診コンサルテーションで、お悩みとこれまでの治療をお聞きし、お口の状態を確かめて、必要な検査をご説明します。
  2. 詳しい検査(料金表の「矯正検査(噛み合わせの検査)」。2〜3回の通院が目安)で、骨格・顎関節の動き・歯の模型などを調べます。
  3. 検査の結果を組み合わせて治療顎位を算出し、咬合器に設定します。
  4. 院内の技工室で、ワックスで形を作り、鋳造してメタルオーバーレイにします。
  5. 口の中に装着し、症状と顎の動きの変化を確かめます。
  6. 確かめた噛み合わせを長く保つために、必要に応じて、矯正や、かぶせ物・入れ歯で整えます。
  7. 治療のあとも、必要に応じて、寝ている間の噛み合わせを確かめます。

口の中で確かめる段階には、メタルオーバーレイのほか、メタルスプリントや仮歯を使うこともあります。

算出した位置へは、段階を分けて近づけることもあります。

矯正と組み合わせるとき

一部の歯に、金属で噛み合わせの情報を先に入れておき、その情報を、矯正のワイヤーでほかの歯へ移していく方法もあります。

ワイヤーについては、MEAW(マルチループ・エッジワイズ・アーチワイヤー)のページをご覧ください。

ループの間に、まっすぐな部分を残して曲げた、上下の矯正用のワイヤー
まっすぐな部分を残して曲げたワイヤー

乳歯と永久歯が混ざっている時期

乳歯と永久歯が混ざっている時期(混合歯列期)に、乳歯に、噛み合わせの情報を入れたメタルオーバーレイを着けることがあります。

入れる情報は、上の「金属の形に表す情報」のように、色分けしたワックスで設計します。

研究でも使っています

院長の研究(2026年の論文)では、健康な若い成人17名に、取り外しのできるメタルオーバーレイを犬歯か第一大臼歯に着けていただき、噛み合わせの条件を変えて、歯ぎしりの動きをしたときの心拍変動・瞳孔反射・咬筋の筋電図を記録しました。

決められた条件のもとで行った研究の知見で、個々の患者さんの症状の原因や、治療の効果を示すものではありません。

記録の方法は心拍変動(HRV)・筋電図(EMG)・瞳孔反射のページで、研究の内容は研究活動・論文のページでご紹介しています。

メタルオーバーレイでできること・できないこと

メタルオーバーレイでできること

  • 検査から算出した治療顎位を、歯の上の金属の形として、口の中に表す
  • 噛み合わせたときに当たる点や、下あごを動かしたときに導く面を、歯ごとに与える
  • 足りない噛み合わせの高さや形を、歯の噛む面に金属を重ねて補う
  • 装着した状態で、症状と顎の動きの変化を確かめる
  • 確かめた情報を、矯正や、かぶせ物・入れ歯へ引き継ぐ

できないこと・当院での補い方

できないこと当院での補い方
治療顎位そのものを決めること検査の記録から算出します(キャディアックス・ラテラルセファロ分析・ギルバッハ レファレンスSL咬合器)
歯の位置や傾きそのものを動かすこと矯正のワイヤー(MEAW)で動かします
確かめた噛み合わせを、長く保てる状態に整えること必要に応じて、矯正や、かぶせ物・入れ歯を組み合わせます(顎関節症のページの STEP 5)
寝ている間に、歯がどう当たっているかを知ることブラックスチェッカーで記録します
頭痛・肩こりなど、全身の症状の原因を決めること装置だけでは決めません。医科など、歯科以外での評価が役立つこともあります

模型の上で決めた形が、その方の口の中で合うかどうかは、装着して使っていただかないと分かりません。

そのため、装着したあとに確かめる段階を設けています。

症状の変わり方や、確かめるまでの経過には、個人差があります。

よくあるご質問

メタルオーバーレイは、ずっと着けておくものですか?

当院では、治療で目指す下あごの位置を、口の中で確かめる段階の装置の一つとして使います。

確かめた噛み合わせは、必要に応じて、矯正や、かぶせ物・入れ歯で、長く保てる状態に整えます。

着けておく期間を含めた治療の期間と回数は、検査・診断のあとにご説明します。

どのような検査をもとに作りますか?

横顔のX線写真の分析(ラテラルセファロ分析)、キャディアックスによる顎関節の動きの記録、咬合器での噛み合わせの分析などの結果から、治療顎位を算出して作ります。

検査の組み合わせは、症状やお口の状態に合わせて決めます。

着けたあとは、何を確かめますか?

症状の変化と、顎の動きの変化を確かめます。

治療のあとには、寝ている間の歯の接触を記録して、噛み合わせが保たれているかも確かめます。

子どもにも使いますか?

乳歯と永久歯が混ざっている時期(混合歯列期)に、乳歯に着けるメタルオーバーレイを使うことがあります。

使うかどうかは、検査の結果をもとに判断します。

メタルオーバーレイは、どこで作りますか?

診療室の隣にある、院内の技工室で作ります。

ワックスで形を作り、鋳造して金属に置き換えます。

参考にした資料

研究の説明に、次の論文を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

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