口内法のゴシックアーチトレーシングとは

口内法のゴシックアーチトレーシングは、口の中に小さな記録の装置を入れ、下あごを動かしたときの道筋を記録する方法です。

当院では、入れ歯をつくるときに、噛みしめた(最大の筋力に近い)状態での下あごの動きの跡を記録するために使います。

一般には「ゴシックアーチ描記法(びょうきほう)」と呼ばれます。

描記とは、動きを線として描いて記録することです。

入れ歯づくりなどで、上下の顎の水平方向の位置関係を決めたり、下あごの動きを診断したりする方法の一つとして、長く使われてきました。

名前は、描かれる図形の形から来ています。

下あごを左右へ動かした道筋は、矢じりや、ゴシック様式の建物のとがったアーチのような形になります。

「口内法」は、記録の装置を口の中に置く方法という意味です。

装置を口の外に置く方法は、「口外法(こうがいほう)」と呼ばれます。

口内法のゴシックアーチトレーシングのしくみ

学術文献と用語集の説明をもとに、一般的なしくみを4つの段階に分けてご紹介します。

  1. 装置を付ける:上下どちらかのあごに平らな板(描記板)を、反対のあごに先のとがった小さな突起(描記針)を取り付けます。
  2. 中央の1点で支える:突起の先が板に当たり、上下のあごは、ほぼ中央の1点で支えられます。この支えの点を、セントラルベアリングポイントといいます。噛む力を、支えている部分の全体に均等に分けるためのしくみです。
  3. 下あごを動かす:突起を板に当てたまま、下あごを前や左右へ動かします。突起が板の上を動き、その道筋が残ります。
  4. 図形を読む:左右へ動かした道筋は、頂点をもつ矢印のような図形になります。この頂点(アペックス)は、一般に、下あごの基準となる位置を示すと考えられています。

一般的な方法では、噛んだときの上下の顎の高さ(咬合高径)を決めてから、この記録を行うとされています。

中央の1点で支えるしくみは、1910年にスイスの歯科医師アルフレッド・ギージーが考案したとされています。

当院の記録のしかた

一般的な方法では、板に塗ったインクの上に、突起で線を描いて記録します。

当院では、上下のあごの間を中央の1点で支える部分(セントラルベアリングポイント)のついた装置を使います。

記録は、噛みしめた状態で行います。

噛みしめた状態での下あごの動きは、樹脂(レジン)に残る跡として記録します。

当院が口内法のゴシックアーチトレーシングを使う理由

噛みしめたときの動きは、キャディアックスでは記録できないから

当院では、顎関節の動きを、キャディアックスという装置で記録します。

キャディアックスで記録できるのは、顎の力を抜いた状態での動きです。

噛みしめた状態での顎関節の動きは、キャディアックスでは記録できません。

そこで、入れ歯をつくるときは、口内法のゴシックアーチトレーシングを組み合わせます。

2つの記録の違いは、次のとおりです。

比べる点キャディアックス口内法のゴシックアーチトレーシング
記録するときの顎の状態力を抜いた状態噛みしめた状態
記録のしかた頭と下あごに付けた器具で、電子的に記録口の中の装置で、樹脂に残る跡として記録
記録されるもの左右の顎関節それぞれの、3次元の動き噛みしめた状態での、下あごの動きの跡
当院で使う場面顎関節症・矯正・入れ歯・かぶせ物入れ歯をつくるとき

入れ歯は、歯茎の上で働くから

入れ歯は、歯茎(粘膜)の上にのって働きます。

軽く噛んだときと、強く噛みしめたときとでは、歯茎にかかる力の大きさがまったく違います。

また、噛む力の大きさや、歯茎の厚みの違いによって、入れ歯が沈み込む量も変わります。

院長は、入れ歯には、力を抜いたときと力を入れたときの、両方の状態を表す必要があると考えています。

顎の動きと、粘膜の形を合わせて考えるため

歯茎(粘膜)の形も、力の入り方によって変わります。

当院では、キャディアックスによる顎関節の動きの記録と、ゴシックアーチトレーシングによる下あごの動きの跡に、力を抜いたとき・力が入ったとき・その中間の粘膜の記録を合わせて、入れ歯の形を考えます。

粘膜の記録について詳しくは、粘膜の記録のページをご覧ください。

咬合器に付けた上下の模型の間に、上の総入れ歯を載せて、手で持っているところ
参考:模型の上の、上の総入れ歯

入れ歯も、歯のある方と同じ考え方でつくるため

当院では、入れ歯の噛み合わせも、歯のある方の噛み合わせと同じ考え方でつくります。

そのため、入れ歯をつくるときも、骨格や顎の動きを記録し、その記録から噛み合わせを考えます。

上の総入れ歯を、前から見たところ
参考:上の総入れ歯

噛めて、長く使える入れ歯を目指すため

院長は、噛めることと、長く使えることの両方を、入れ歯の目標にしています。

そのために、2つの状態の記録をきちんと取り、入れ歯の形に表すことを大切にしています。

実際に使える期間には、個人差があります。

当院での実際

入れ歯の治療の流れの中で

口内法のゴシックアーチトレーシングは、入れ歯をつくるときの検査の一つです。

入れ歯の検査では、お口の状態に合わせて、次のような記録を組み合わせます。

  • キャディアックス:力を抜いた状態での、顎関節の動き
  • ラテラルセファロ分析:骨格。噛んだときの上下の顎の高さ(咬合高径)と、歯を並べる面の傾き(咬合平面)を考えます
  • 口内法のゴシックアーチトレーシング:噛みしめた状態での、下あごの動きの跡
  • 粘膜の記録:力を抜いたとき・力が入ったとき・その中間の、粘膜の形

骨格と顎の動きの記録は咬合器に設定し、人工歯の位置や、噛む面の傾きを考えます。

総入れ歯では、キャディアックスの記録から、人工歯の山の斜面の角度(咬頭傾斜角)を考えます。

粘膜の記録は、力を抜いたとき・力が入ったとき・その中間の形を、入れ歯の形に表すために使います。

記録から人工歯を並べる工程は人工歯の排列、記録を設定する装置はギルバッハ レファレンスSL咬合器のページでご紹介しています。

そのあと、仮義歯を使っていただいて機能や見た目を確かめ、最終的な入れ歯をつくります。

咬合器に付けた上下の模型の上に、総入れ歯の人工歯を並べたところ(前から)
参考:模型の上に並べた、総入れ歯の人工歯

記録のときに、していただくこと

記録のときは、口の中に装置を入れた状態で、しっかり噛みしめていただきます。

一般的な方法では、突起を板に当てたまま、下あごを前や左右へ動かして記録します。

こうした動作には、すぐに慣れる方もいれば、何度か練習が要る方もいるとされています。

どの入れ歯で行うか

院長の投稿でこの記録を紹介しているのは、総入れ歯をつくる例です。

どの検査を行うかは、残っている歯の有無など、お口の状態に合わせて選びます。

口内法のゴシックアーチトレーシングで分かること・分からないこと

口内法のゴシックアーチトレーシングで分かること

  • 噛みしめた(最大の筋力に近い)状態での、下あごの動きの跡
  • 噛みしめた状態での、下あごの動きの跡(樹脂に残る跡)
  • 一般には、描かれた図形の形と頂点(アペックス)の位置。上下の顎の水平方向の位置関係を考える手がかりになるとされています

分からないこと・当院での補い方

分からないこと当院での補い方
力を抜いた状態での顎関節の動きキャディアックス
左右の顎関節それぞれの、3次元の動きと時間の経過キャディアックス
骨格と、噛んだときの上下の顎の高さ(咬合高径)ラテラルセファロ分析
入れ歯を支える粘膜の形粘膜の記録
記録から考えた噛み合わせが、口の中で合うか仮義歯を使っていただきながら確かめる

また、一般に、この記録の結果は、使う材料、記録する側の熟練、患者さんの理解と協力によって差が出ることがあるとされています。

下あごを思うように動かすことが難しい方では、記録が難しくなることもあります。

よくあるご質問

キャディアックスとは、何が違うのですか?

キャディアックスは、顎の力を抜いた状態で、左右の顎関節の動きを3次元で記録します。

口内法のゴシックアーチトレーシングは、噛みしめた状態での動きを、口の中の装置で記録します。

入れ歯をつくるときは、両方の記録を合わせて使います。

どんなときに行いますか?

当院では、入れ歯をつくるときの記録の一つとして行います。

どの検査を行うかは、お口の状態に合わせて選びます。

記録のときは、何をするのですか?

口の中に記録の装置を入れた状態で、しっかり噛みしめていただきます。

一般的な方法では、そのまま下あごを前や左右へ動かして記録します。

なぜ「口内法」というのですか?

記録の装置を、口の中に置いて記録するためです。

装置を口の外に置いて記録する方法は、口外法と呼ばれます。

記録は、何に使うのですか?

キャディアックスの記録や粘膜の記録と合わせて、入れ歯の形を考えるために使います。

参考にした資料

一般的な説明(ゴシックアーチ描記法のしくみ・用語)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

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