鋳造とは
鋳造(ちゅうぞう)は、ワックスでつくった形を、金属に置き換える方法です。
歯科では、一般に「ロストワックス法」と呼ばれる方法が使われます。
ワックスでつくった原型を、熱に強い特殊な石こうの中に埋め込み、加熱してワックスを焼いてなくします。
石こうの中にできた空洞(鋳型)に溶かした金属を流し込むと、原型と同じ形の金属ができます。
この方法は、1907年に、歯科医師のタガートが考え出したとされています。
歯に詰めたりかぶせたりするものや、入れ歯の金属の部分など、歯科で使う多くの金属のものが、この方法でつくられています。
当院では、入れ歯の金属のフレームや、金属の仮歯、顎関節症の治療で使う金属の装置などを、院内の技工室で鋳造しています。
鋳造のしくみ
入れ歯の金属のフレームを例に、当院の鋳造の流れをご紹介します。
- ワックスで形をつくる:鋳造の熱に耐える材料でつくった模型(耐火模型)の上で、フレームの形をワックスでつくります(ワックスアップ)。
- 鋳型をつくる:ワックスのまわりに、さらに耐火模型材を注いで鋳型をつくります。入れ歯のフレームの例では、直径10cmの鋳型になります。
- ワックスを焼いてなくす:鋳型を6時間かけてゆっくり温度を上げ、中のワックスを焼いてなくします。ワックスがあった所に、同じ形の空洞ができます。
- 金属を流し込む:高周波と真空の環境で、高純度の白金加金を短い時間で溶かし、圧力をかけて空洞に流し込みます。入れ歯のフレームの例では、白金加金を50グラム使います。
- 取り出して仕上げる:冷えて固まった金属を鋳型から取り出し、形を整えて磨きます。入れ歯の金属のフレームは、鏡面に磨き上げることもあります。
形が縮むことと、その補正
一般に、鋳造では、型の石こうが固まるときの寸法の変化や、流し込んだ金属が冷えて固まるまでの縮みが問題になります。
歯科の鋳造では、十ミクロン(0.01mm)以下の精度が目指されています。
当院の入れ歯では、白金加金の鋳造での縮み(鋳造収縮)と、入れ歯の樹脂が固まるときの縮み(重合収縮)を見込んで、補正値を入れて設計します。
大きな金属のフレームは、鋳造の誤差を補正するため、いくつかのブロックに分けて鋳造することがあります。
上顎の補綴物(失った歯を補うもの)の例では、フレームを3つのブロックに分けて鋳造し、フレームと同じ金属を使って、レーザー溶接で一つにつなぎました。
当院が鋳造を使う理由
ワックスで設計した形を、そのまま金属に写すため
検査で分かったことは、まずワックスの形に表します。
その形を金属に写すのが鋳造で、院長はこれを「情報の転写」と呼んでいます。
院長は、精密なかぶせ物や入れ歯をつくるには、ワックスを金属に置き換える方法そのものにこだわる必要があると考えています。
金属の中に、異物を入れないため
鋳造した金属の中身を密にし、空気中の塵や酸化物が入り込むのを抑えるため、高周波・真空・加圧の環境で鋳造します。
加熱するときの温度の上げ方や、空気を抜いた中での鋳造によって、金属の結晶を均一にし、異物が入るのを防ぐことを目指しています。
白金加金を、形にするため
当院が入れ歯のフレームに使う白金加金は、鋳造で形にします。
当院での実際
鋳造でつくるもの
鋳造の前と後
- 検査の値を咬合器に設定し、模型の上でワックスの形をつくります(ワックスアップ)。
- 鋳型をつくり、ワックスを焼いてなくし、金属を流し込みます(鋳造)。
- 取り出した金属の形を整えます。入れ歯の部品は、必要に応じて向きをそろえ(パラレルミーリング)、分けた部品はつなぎます(レーザー溶接)。
- 仕上がりを確かめたうえで、お口に入れ、顎の動きを記録し直すなどして確かめます。
鋳造は、院内の技工室で行う作業です。
鋳造でできること・できないこと
鋳造でできること
- ワックスでつくった細かな形を、金属に置き換える
- 入れ歯のフレームのような大きなものから、金属の仮歯や装置までつくる
- 縮みを見込んだ補正値を入れて、設計する
できないこと・当院での補い方
鋳造では、金属が冷えて固まるときの縮みなどを、まったくなくすことはできません。
また、鋳造に向かない素材もあります。
| できないこと | 当院での補い方 |
|---|---|
| 形の縮みや誤差を、まったくなくすこと | 縮みを見込んだ補正値を入れる。大きなフレームは分けて鋳造し、レーザー溶接でつなぐ |
| 入れ歯の部品どうしの向き(着け外しの方向)をそろえること | 鋳造のあと、パラレルミーリングで向きを整える |
| ジルコニアを形にすること | 光で読み取り、CAD/CAMで削り出して焼き固める(ジルコニアのかぶせ物) |
| チタンのように、精密な鋳造が難しい金属を形にすること | 大きな塊から削り出してつくる(チタン) |
| 鋳造したものが、その方のお口で合うかを確かめること | お口に入れて確かめる。仮歯・仮義歯で使ってみて確かめる |
よくあるご質問
- 鋳造とは、どのような方法ですか?
ワックスでつくった形を、熱に強い石こうの中に埋め込み、加熱してワックスを焼いてなくします。
できた空洞に溶かした金属を流し込み、同じ形の金属をつくる方法です(ロストワックス法)。
- どんな金属を鋳造していますか?
入れ歯の金属のフレームには、白金加金(プラチナゴールド)を使っています。
入れ歯のフレームの例では、高純度の白金加金を50グラム使って鋳造します。
- 鋳造すると、形は変わりませんか?
金属は、冷えて固まるときに縮みます。
当院では、縮みを見込んだ補正値を入れて設計し、大きなフレームは分けて鋳造して、レーザー溶接でつなぐこともあります。
- なぜ、真空の中で鋳造するのですか?
空気中の塵や酸化物が、金属の中に入り込まないようにするためです。
- 鋳造は、どこで行っていますか?
院内の技工室で行っています。
関連する技術・治療
参考にした資料
一般的な説明(ロストワックス法のしくみと、鋳造の縮み・チタンの鋳造の難しさ)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。
相談・お問い合わせ
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