ラテラルセファロ分析とは

ラテラルセファロ分析は、横顔のX線写真(ラテラルセファロ)を使って、顔と顎の骨格を数値で調べる方法です。

歯並びの奥にある上下の顎の骨の形と位置を、横から見た角度や長さとして表します。

当院の診査項目では「X線による骨格検査」にあたり、同じ項目にはオルソパントモ(パノラマX線写真)も含まれます。

ラテラルセファロ(横顔のX線写真)の分析画面。骨格の上に分析の線と記号が描かれている
ラテラルセファロの分析画面

写真は、当院の分析画面です。

横顔のX線写真の上に、骨格を分析するための線と記号が描かれています。

ラテラルセファロ分析のしくみ

分析は、一般に次の順番で進みます。

  1. 撮影する:横顔のX線写真を撮ります。
  2. 点を決める:写真の上で、骨の決まった点や輪郭を、画面の上で指定します。
  3. 数値にする:点と点を結ぶ線の角度や長さから、骨格の特徴を表す数値を計算します。
  4. 基準をそろえる:当院では、骨格の数値を、顎関節や歯の値と同じ基準の面の上で読みます。

分析で見る主な数値

当院の分析では、たとえば次のような数値を見ます。

数値・見るもの何を表すか
下顔面高(LFH)顔の下の部分の高さ
APDI下あごの前後の位置
ポステリア ディスクレパンシー奥歯の部分で、歯の大きさに対して、歯を支える骨が足りない度合い
咬合高径噛んだときの、上下の顎のあいだの高さ
咬合平面上下の歯が噛み合う面の傾き

APDI は、横顔のX線写真のいくつかの角度を組み合わせて、上下の顎の前後の関係のずれを見るための指標として、1978年に発表されました。

当院では、下あごの前後の位置を見る数値として使っています。

ポステリア ディスクレパンシーは、神奈川歯科大学の佐藤貞雄教授らが1980年代から報告してきた考え方です。

佐藤教授らは、奥歯の部分で骨の土台が足りないと、奥歯の位置や噛む面の傾きが変わり、下あごの位置にも関わる、と報告しています。

画面の「HCI」は、キャディアックスの値

写真の分析画面には、骨格の線と並んで、「HCI」と書かれた線も描かれています。

HCI(前方矢状窩路角)は、顎関節が前へ動くときの道筋の傾きです。

骨格ではなく顎関節の動きの値で、キャディアックスで記録します。

骨格の分析と、顎関節の動きの記録を、同じ基準の面の上で重ねて見る方法は、ウィーン大学のスラビチェック教授が取り入れたものです。

製造元の分析プログラムも、横顔のX線写真の分析を、顎関節の動きの記録や咬合器と結びつけて見られる、としています。

基準の面をそろえる

角度や長さは、どこを基準に測ったかによって意味が変わります。

数値には「どこから見た値か」という基準が要ります。

当院では、骨格・顎関節の動き・歯の角度のすべてを、アキシス・オルビタール平面という一つの面を基準に測ります。

アキシス・オルビタール平面は、左右の顎関節の回転の軸(蝶番軸)と、目の下の骨の一点を結んだ面です。

同じ基準で測った値は、ギルバッハ レファレンスSL咬合器の上に、そのまま表せます。

骨格の分析の結果を、模型の上での噛み合わせの設計につなげられるのは、そのためです。

頭の骨格の図に咬合器の図を重ね、アキシス・オルビタール平面(Axis-orbital plane)や角度の線を書き入れた図
アキシス・オルビタール平面を書き入れた、咬合器と頭の骨格の図

当院がラテラルセファロ分析を使う理由

骨格そのものに、原因があることがあるから

顎関節症の方の中には、きれいな歯並びの方もいらっしゃいます。

骨格そのものに原因がある場合、口の中だけをどれだけ細かく見ても、解決の手がかりが見つからないことがあります。

そのため当院では、歯だけでなく、顎関節と骨格を含めた頭全体を見ます。

骨と歯の大きさの差を、数値で確かめたいから

院長は、今の人の歯並びの問題の背景に、骨と歯の大きさの差があると考えています。

院長の説明では、人類は二足歩行へ移るあいだに脳が大きくなる一方で、顔の下の部分が小さくなりました。

その小さくなった顎の骨に、それほど小さくなっていない歯が並んでいる、という見方です。

公園の3人掛けのベンチに、体の大きな力士が3人で座ろうとしているような状態にたとえられます。

ラテラルセファロ分析では、この差(ポステリア ディスクレパンシー)がどのくらい影響しているかを、数値で確かめます。

顎関節・歯の値と、同じ物差しでそろえるため

骨格の値を、顎関節の動きや歯の角度と同じ基準の面で測ると、咬合器の上で一つにまとめられます。

測った値を、装置や歯の形にするために、基準をそろえています。

骨格の発育の様子を確かめるため

この分析では、骨格がどのように育ってきたかも確かめます。

たとえば、顔の下の部分の高さの発育の遅れや、上あご・下あごの後ろの部分の発育の不足が、分析で分かることがあります。

当院での実際

検査の中での位置づけ

横顔のX線写真の撮影は、初診コンサルテーションのあとに行う、詳しい検査の一つです。

料金表では、顎関節症・矯正の「矯正検査(噛み合わせの検査)」の項目の一つです。

通院の回数は、矯正検査の全体で2〜3回が目安です。

撮影するかどうかも含めて、検査の組み合わせは、症状やお口の状態を見て決めます。

撮影から、設計まで

  1. 詳しい検査の中で、横顔のX線写真を撮影します。
  2. 同じ時期に、必要に応じて、キャディアックスによる顎関節の動きの記録や、歯型と分割模型による一本ずつの歯の検査を行います。
  3. 写真の上で骨格を分析し、下顔面高・APDI などの数値を出します。
  4. 骨格の値を、顎関節の記録や歯の角度と同じ基準の面でそろえ、咬合器に設定する値を決めます。
  5. 分析の結果は、数値を使ってご説明します。

顎関節症・矯正

上下の歯列の形をした仮歯
仮歯

骨格の特徴は、治療で目指す下あごの位置(治療顎位)を考える材料の一つです。

その位置は、メタルオーバーレイや仮歯などの装置に表し、実際の口の中で確かめます。

矯正では、骨格の分析と顎関節の動きの記録を合わせて、歯を動かす計画を考えます。

灰色の布の上に置いた、ループを曲げ込んだ上下の矯正用のワイヤー
矯正用のワイヤー(MEAW)

入れ歯

上下の総入れ歯
上下の総入れ歯

総入れ歯では、骨格の分析をもとに、噛んだときの上下の顎の高さ(咬合高径)と、噛む面の傾き(咬合平面)を決めます。

人工歯の斜面の角度(咬頭傾斜角)は、キャディアックスの記録から決めます。

人工歯の並べ方は、人工歯の排列のページでご紹介しています。

かぶせ物

多くの歯をまとめてかぶせ物で整えるときも、骨格のデータを、顎関節の記録や咬合器での分析と合わせて、形を決める材料にします。

布の上に置いた、歯列全体のかぶせ物
全顎のかぶせ物

ラテラルセファロ分析で分かること・分からないこと

ラテラルセファロ分析で分かること

  • 上下の顎の骨の、前後・上下の位置関係
  • 顔の下の部分の高さ(下顔面高)
  • 骨と歯の大きさの差(ポステリア ディスクレパンシー)の影響
  • 噛んだときの上下の顎の高さ(咬合高径)と、噛む面の傾き(咬合平面)
  • 骨格がどのように発育してきたか

分からないこと・当院での補い方

分からないこと当院での補い方
顎関節が実際にどう動くか(HCI などの、道筋の角度を含む)キャディアックス
噛みしめた状態の下あごの動きの跡口内法のゴシックアーチトレーシング(入れ歯をつくるとき)
一本ずつの歯の向きや傾き分割模型
歯列の模型の上での、噛む面の細かな傾き咬合平面の計測
寝ている間の歯の接触ブラックスチェッカー
模型の上で決めた位置が、口の中で合うか仮歯や装置を使いながら確かめる(仮歯・仮義歯)

X線写真から分かるのは、骨格の形と位置関係です。

頭痛や肩こりなどの症状がなぜ起きているのかは、この分析だけでは決められません。

症状によっては、医科など、歯科以外での評価もご検討ください。

よくあるご質問

歯並びを調べる検査ですか?

歯並びだけでなく、その奥にある上下の顎の骨格を調べます。

上下の顎の位置関係や顔の下の部分の高さを、角度や長さで確かめます。

この分析で、顎関節の動きも分かりますか?

いいえ。この分析で分かるのは、骨格の形と位置関係です。

顎関節の動き(HCI などの道筋の角度を含む)はキャディアックスで記録し、同じ基準の面の上で、骨格の分析と合わせて見ます。

なぜ、基準となる面が必要なのですか?

角度や長さは、どこから測ったかをそろえないと、比べたり組み合わせたりできないためです。

当院では、アキシス・オルビタール平面を基準にして測ります。

入れ歯をつくるときにも撮影しますか?

はい。総入れ歯では、噛んだときの上下の顎の高さと、噛む面の傾きを決めるのに使います。

検査を受けたら、治療を受けることになりますか?

いいえ。矯正などの治療を行うかどうかは検査の結果を見て判断し、行わない場合もあります。

検査のあとに、考えられる選択肢と、それぞれの費用・期間・回数をお伝えします。

治療を受けるかどうかは、そのうえで考えていただけます。

参考にした資料

一般的な説明(APDI・ポステリア ディスクレパンシー・HCI・基準の面・分析のしくみ)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

あわせてお読みください

診療の考え方 ↗研究活動・論文を読む ↗診療時間・アクセス ↗