技工用の実体顕微鏡とは
技工用の実体顕微鏡は、院内の技工室で、仮歯やかぶせ物、入れ歯の部品、矯正用のワイヤーなどを、拡大して立体的に見ながら作業・確認するための顕微鏡です。
診療室で、治療する部分を拡大して見る歯科用マイクロスコープとは、使う場所も目的も違う機器です。
このページでは、技工室の顕微鏡についてご紹介します。
技工用の実体顕微鏡のしくみ
実体顕微鏡の一般的なしくみを、4つに分けてご紹介します。
- 左右の目に、別々の像を送る:左右の目に、少しだけ角度の違う像を送ります。
- 立体的に見える:2つの像が頭の中で1つになり、奥行きや凹凸が立体的に見えます。人が両目で物を立体的に見るのと同じしくみです。
- 見ている物と同じ向きに見える:像が実物と同じ向きに見えるため、見ながら手を動かす作業に向いています。
- 物との間を広くとれる:レンズと見る物との間を広くとれるため、見ながら器具を使った作業がしやすくなります。
一般に、倍率を上げるほど、見える範囲は狭くなります。
同時に、ピントの合って見える奥行き(被写界深度)も浅くなります。
当院の技工室の顕微鏡は、接眼レンズの倍率をあえて抑えています。
ピントの合って見える奥行きを深くして、作業する範囲の全体を見渡しやすくするためです。
当院が技工用の実体顕微鏡を使う理由
小さな物にも、細かな形があるから
一本の仮歯でも、形を確かめながら作るから
一本の小さな仮歯でも、最終的なかぶせ物と同じように、働きと見た目を考えて形を整えることを目指しています。
仮歯の製作と確認にも、技工室の顕微鏡を使います。
検査で得た情報を、形に表すため
当院では、顎の動きや骨格、歯の位置などの検査の情報を、装置やかぶせ物の形に表すことを大切にしています。
その形をつくる技工の作業を、顕微鏡の下で行います。
当院での実際
どの作業で使うか
技工室の顕微鏡は、形をつくる段階、金属をつなぐ段階、できあがった物を確かめる段階で使います。
| 作業 | 顕微鏡で見ること | 詳しいページ |
|---|---|---|
| ワックスアップ(ワックスで形をつくる) | 模型の上でつくる歯の形や、噛み合わせの形 | ワックスアップ |
| 仮歯の製作と確認 | 小さな仮歯の形と仕上がり | 仮歯・仮義歯 |
| できあがったかぶせ物の確認 | 完成した形と仕上がり | ジルコニアのかぶせ物 |
| レーザー溶接での接合・修理 | 金属をつなぐ部分と、その周りの形 | レーザー溶接 |
| 矯正用のワイヤーの確認 | 曲げたワイヤーの細かな形 | MEAW |
| リテーナーの中の装置の微調整 | リテーナーの中に付ける装置の細かな部分 | リテーナー |
| プライヤーの先端の加工 | レーザー溶接した先端の形 | プライヤーの先端加工 |
矯正用のワイヤーや、リテーナーの中の装置の調整は、診療室の隣の技工室で行います。
ほかの技術との組み合わせ
技工室の顕微鏡は、それだけで形を決める機器ではありません。
形のもとになるのは、顎の動きや骨格の記録と、それを設定した咬合器です。
顕微鏡は、その形を細かく整え、仕上がりを確かめるために使います。
お口の中での合い方は、診療室で確かめます(下の「できないこと」の表)。
技工用の実体顕微鏡でできること・できないこと
できること
- 仮歯、かぶせ物、入れ歯の部品などを、拡大して見る
- 奥行きや凹凸を、立体的に見る
- 見ている物と同じ向きの像を見ながら、手や器具を動かす
- 矯正用のワイヤーや、レーザー溶接した部分を確かめる
- 接眼レンズの倍率を抑えて、作業する範囲の全体を見渡す
できないこと・当院での補い方
技工室の顕微鏡で見られるのは、お口の外にある製作物です。
お口の中での合い方、顎の動きとの関係、実際に使ったときの具合までは、技工室だけでは確かめられません。
また、一般に、倍率を上げるほど見える範囲は狭く、ピントの合う奥行きは浅くなります。
細かな部分と、作業する範囲の全体を、一つの倍率で同時に見やすくすることには限りがあります。
| できないこと | 当院での補い方 |
|---|---|
| かぶせ物と歯との合い方を、お口の中で確かめること | 診療室の歯科用マイクロスコープで確かめます |
| 製作物が、噛み合わせや顎の動きに合っているかを判断すること | キャディアックスの記録と咬合器をもとに考えます |
| 実際に使ったときに、位置や形が合うかを確かめること | 仮歯・仮義歯を使っていただきながら確かめます |
| 倍率を上げたまま、作業する範囲の全体を見渡すこと | 接眼レンズの倍率をあえて抑え、ピントの合う奥行きを深くしています |
よくあるご質問
- 診療室の歯科用マイクロスコープとは、何が違いますか?
技工用の実体顕微鏡は、院内の技工室で、製作物を立体的に見ながら作業・確認するための機器です。
診療室の歯科用マイクロスコープは、お口の中の治療する部分を拡大して見るために使います。
- どのような物を見ますか?
仮歯、かぶせ物、入れ歯の部品、リテーナーの中の装置、矯正用のワイヤーやプライヤーなどを見ます。
形をつくる途中だけでなく、金属をつないだ部分や、できあがった物も確かめます。
- なぜ、倍率をあえて抑えているのですか?
一般に、倍率を上げるほど、見える範囲が狭くなり、ピントの合う奥行きも浅くなるためです。
当院では接眼レンズの倍率をあえて抑え、作業する範囲の全体を見渡しやすくしています。
- 仮歯も、顕微鏡で見ながら作るのですか?
はい。
一本の小さな仮歯でも、働きと見た目を考えて形を整えることを目指し、顕微鏡の下で製作と確認を行います。
- 顕微鏡で確かめれば、お口に合うことが分かりますか?
技工室の顕微鏡で分かるのは、製作物の形と仕上がりです。
お口の中での合い方は診療室の歯科用マイクロスコープで確かめ、噛み合わせや顎の動きとの関係は、キャディアックスや咬合器、仮歯を使って確かめます。
関連する技術・治療
参考にした資料
一般的なしくみ(立体的に見えるしくみ、倍率と見える範囲・奥行きの関係)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿と今のサイトの説明によるものです。
- Nikon MicroscopyU「Introduction to Stereomicroscopy」(製造元の解説・英語)
- Low JF, Mohd Dom TN, Baharin SA. Magnification in endodontics: A review of its application and acceptance among dental practitioners. Eur J Dent. 2018;12(4):610-616(英語)
相談・お問い合わせ
医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00
初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。
噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。




