レーザー溶接とは
レーザー溶接は、レーザーのエネルギーを小さな範囲に集めて金属を溶かし、固めることで、金属どうしを一体にしてつなぐ方法です。
歯科では、大きなブリッジや、金属のフレームを使った入れ歯などで、金属の部品どうしをつなぐときに使われています。
当院では、アルゴンガスの中で、純度の高い白金加金(プラチナゴールド)の細い線を、つなぐ元の金属と一体化させて接合します。
入れ歯などの金属の部品をつなぐとき、使い始めたあとの修理、矯正で使う器具の先端の加工に使っています。
溶接は、院内の技工室にある、ドイツ・ヘレウス(Heraeus)社製の高出力レーザー溶接器で行います。
レーザー溶接のしくみ
当院での溶接を、4つの段階に分けてご紹介します。
- アルゴンガスで満たす:つなぐ元の金属(母材・ぼざい)の、接合する所を、アルゴンガスで満たします。
- 白金加金の線を当てる:純度の高い白金加金の、細い針のような線を、つなぐ所に当てます。
- レーザーを当てる:高出力のレーザーを当てて、白金加金の線と母材とを一体にします。
- 拡大して確かめる:仕上がりを、顕微鏡で拡大して確かめます。
写真のとおり、溶接器には、のぞいて作業するための接眼レンズが付いています。
アルゴンガスの中で溶接する理由
アルゴンガスで満たした中で溶接するのは、接合する所に酸化膜ができるのを抑え、異物が入り込みにくくするためです。
一般に、溶接では、溶けた金属が空気中の酸素や窒素と触れないように、まわりをガスで覆います。
アルゴンは、溶けた金属と化学反応を起こしにくい気体(不活性ガス)で、このために使われるガスの一つです。
母材と、加える金属
つなぐ元の金属を、母材と呼びます。
当院では、つなぐときに加える金属に、純度の高い白金加金を使います。
分けて鋳造したフレームをつないだ例では、フレームと同じ金属を使ってつなぎました。
白金加金という素材については、白金加金のページでご説明しています。
一般的な特徴
一般に、歯科のレーザー溶接には、次のような特徴があるとされています。
- 模型の上で、そのまま作業できる
- つなぐ所に、ろう(金属どうしをつなぐための、別の種類の金属)をはさまない
- レーザーのエネルギーを小さな範囲に集めるため、まわりに熱の影響が及びにくい
当院がレーザー溶接を使う理由
つなぐ所に、酸化膜や異物を入れたくないから
金属どうしをつなぐとき、接合する所に酸化膜ができたり、異物が入り込んだりしないようにしたい、というのが院長の考えです。
そのために、アルゴンガスで満たした中で、高出力のレーザーで接合しています。
分けてつくった部品を、ひとつにするため
大きな金属のフレームは、鋳造(ワックスでつくった形を金属に置き換える方法)で生じる誤差を補正するため、いくつかに分けて鋳造することがあります。
分けた部品を、ひとつのフレームにつなぐのが、レーザー溶接です。
使い始めてからも、手を入れられるようにするため
入れ歯は、一度つくったら終わりではなく、細かな調整を重ねながら、長い期間使っていただくものだ、というのが院長の考えです。
年月がたつと、残っていた歯を保存できなくなるなど、お口の状態が変わることがあります。
そのようなときにも、金属を加えたり、人工歯を加えたりする修理ができるよう、レーザー溶接を使っています。
当院での実際
製作で:分けて鋳造した部品を、ひとつにつなぐ
上あごの補綴物(失った歯を補うもの)の金属のフレームを、3つのブロックに分けて鋳造した例があります。
この例では、アルゴンガスの中で、フレームと同じ金属を使い、高出力のレーザーで3つをひとつにつなぎました。
鋳造のしくみは、鋳造のページでご説明しています。
修理で:金属を加える・アタッチメントをつなぐ
使い始めた入れ歯の金属の部分に、白金加金を加える修理を行います。
加えた所は、表面が粗く見えます。
入れ歯と支える歯をつなぐ部品(アタッチメント)を、入れ歯に接合する修理も行います。
後から、人工歯を加える
入れ歯を作ったあとに、残っていた歯の一部を保存できなくなることがあります。
そのようなときは、入れ歯に人工歯を加える修理を検討します。
当院では、こうした修理にも対応できるように、入れ歯の金属のフレームの素材を選んでいます。
着け外しをしやすくする工夫
入れ歯を歯にとどめる部分(維持装置)の先に白金加金を溶接して、着け外しをしやすくする工夫をすることがあります。
写真は、仮の入れ歯(仮義歯)で行った例です(黄色い矢印の先)。
器具の先端を加工する
矯正で使うプライヤー(細い金属の線をつかむ器具)の先端にも、白金加金をレーザー溶接して、形を整えています。
詳しくは、プライヤーの先端加工のページでご説明しています。
ほかの技術との組み合わせ
- 鋳造:分けて鋳造した部品を、溶接でひとつにつなぎます。
- 白金加金:溶接で加える金属です。修理に対応できる素材として選んでいます。
- アタッチメント:入れ歯と支える歯をつなぐ部品を、溶接で接合します。
- 技工用の実体顕微鏡:仕上がりを拡大して確かめます。
レーザー溶接でできること・できないこと
レーザー溶接でできること
- 分けて鋳造した金属の部品を、ひとつにつなぐこと
- 入れ歯の金属の部分に、白金加金を加えること
- アタッチメントを、入れ歯に接合すること
- 後から人工歯を加える修理(入れ歯の素材や構造によります)
- 維持装置の先端や、矯正で使う器具の先端を加工すること
できないこと・当院での補い方
| できないこと | 当院での補い方 |
|---|---|
| どの入れ歯でも、同じように修理すること | 使われている素材や構造、入れ歯とお口の状態を確かめ、修理か作り直しかを判断します |
| 接合する所に、小さな空洞やひびができる可能性をなくすこと(一般に指摘されている点です) | アルゴンガスの中で作業し、仕上がりを顕微鏡で拡大して確かめます |
| 修理したあとの入れ歯が、変化しないようにすること | 経過を確かめ、必要に応じて調整します |
入れ歯の主なリスク・副作用には、慣れるまでの違和感、調整の必要、経年での作り直しがあります。
修理したあとの入れ歯も、全身やお口の環境の変化、経年による劣化などの影響を受けることがあります。
よくあるご質問
- 入れ歯の金属の部分が壊れたとき、修理できますか?
金属の部分をつないだり、白金加金を加えたりする修理を、院内の技工室で行っています。
どのような修理ができるかは、素材や構造、入れ歯とお口の状態を確かめて判断します。
- 後から、入れ歯に歯を足すことはできますか?
残っていた歯を保存できなくなったときなどに、人工歯を加える修理を検討します。
すべての入れ歯でできるわけではなく、素材や構造も含めて確かめます。
- なぜ、アルゴンガスの中で溶接するのですか?
接合する所に酸化膜ができるのを抑え、異物が入り込みにくくするためです。
- 溶接の仕上がりは、どのように確かめていますか?
仕上がりを、顕微鏡で拡大して確かめています。
修理のあとも、入れ歯とお口の状態を確かめ、必要に応じて調整します。
- 入れ歯のほかにも使いますか?
上あごの補綴物の金属のフレームをつなぐときや、矯正で使うプライヤーの先端の加工にも使っています。
関連する技術・治療
- プライヤーの先端加工:矯正用の器具の先端に、白金加金を溶接する
- 鋳造:ワックスの形を金属に置き換える
- 白金加金:溶接で加える金属
- アタッチメント:入れ歯と支える歯をつなぐ装置
- 使用している技術の一覧
- 入れ歯(精密義歯)
- 顎関節症・歯をなるべく抜かない矯正歯科
参考にした資料
一般的な説明(レーザー溶接のしくみと特徴・注意点、溶接でガスを使う理由)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の説明によるものです。
- 嶋倉道郎・竹内操「歯科用金属のレーザー溶接時における溶融部の硬さ変化」日本レーザー歯学会誌 21巻3号, 2010
- 溶接情報センター(日本溶接協会)「接合・溶接技術Q&A:シールドガスは,なぜ必要なのですか」
相談・お問い合わせ
医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
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