MEAWとは

MEAW(マルチループ・エッジワイズ・アーチワイヤー)は、小さなループ(輪のような曲げ)をいくつも曲げ込んだ、矯正用のワイヤーです。

ループの形と角度を一本ずつの歯に合わせて曲げることで、歯を前後・左右・上下と、傾きの方向に動かしていきます。

黒い背景の上に置いた、上下のMEAW。歯並びに沿って曲げたワイヤーに、小さなループがいくつも付いている
MEAW(上下)

名前の意味

MEAW は、英語の Multiloop Edgewise Archwire の頭文字です。

  • マルチループ(Multiloop):ループがたくさんあること
  • エッジワイズ(Edgewise):歯に付けた小さな留め具(ブラケット)の溝に、断面が長方形のワイヤーをはめて使う方法(エッジワイズ法)のワイヤーであること
  • アーチワイヤー(Archwire):歯並びに沿って、弓の形に曲げたワイヤーであること

考案の経緯

MEAW は、米国タフツ大学のヤング・H・キム(Young H. Kim)先生が考案した方法で、1987年の論文で紹介されました。

もとは、前歯が上下で噛み合わない状態(開咬)の治療のために考えられ、その後、ほかの噛み合わせの治療にも使われるようになったとされています。

日本では、神奈川歯科大学の佐藤貞雄教授が、この考え方を受け継いで広めました。

院長は、佐藤教授のもとで、この考え方にもとづく矯正・補綴・顎関節症の臨床と研究に携わってきました。

MEAWのしくみ

歯とワイヤーのつなぎ方

歯に小さな留め具(ブラケット)を付け、そこにワイヤーを通して、細い針金(結紮線:けっさつせん)などで留めます。

ループの役割

一般的な説明では、MEAW は、断面が 0.016×0.022インチ(約0.4×0.56mm)のステンレス製のワイヤーを、歯並びの形に曲げて作ります。

左右それぞれ、前から2番目の歯(側切歯)より後ろの、歯と歯のあいだに、L字形のループを5つずつ曲げ込みます。

ループを曲げ込むことで、側切歯の後ろから第二大臼歯までのワイヤーの長さは、ループのないワイヤーの約43mmに対して、約120mmになるとされています。

ワイヤーが長くなる分しなやかになり、ループの縦と横の部分で、歯ごとに動きを分けてかけられるとされています。

当院では、ループの形や角度を、一人ひとりの検査の結果と治療計画に合わせて曲げます。

ループをいくつも曲げ込んだ、矯正用のワイヤー(MEAW)
ループを曲げ込んだMEAW

曲げ方で、歯の動きが決まる

どの歯を、どの向きに、どれだけ動かすかは、ワイヤーの曲げ方で決まります。

歯ごとに、必要な位置も、歯の軸(歯軸:根の先から歯の先へ通る線)の向きも違うため、一本ずつ違う曲げ方をします。

同じMEAWでも、噛み合わせの状態によって、曲げ方は大きく変わります。

例えば、上の前歯が出ている状態(上顎前突)と、受け口(下顎前突)とでは、奥歯の噛む面に向けた曲げの角度が違います。

奥歯の噛む面(咬合平面)の考え方

上下の歯が噛み合う面を、咬合平面(こうごうへいめん)といいます。

MEAW を広めた佐藤教授の理論では、奥歯の咬合平面の上下の位置と傾きが、下あごの前後の位置に直接関わるとされています。

院長も、奥歯の並びの角度が、下あごの前後の位置に影響する、と説明しています。

青緑の布の上に置いた、金色に見える上下のMEAW
上下のMEAW

ゴムとの組み合わせ

一般に、MEAW は、前歯のところに縦にかけるゴムと組み合わせて使うとされています。

当院がMEAWを使う理由

一本ずつ、違う動きが必要だから

歯には、それぞれ果たす役割があり、必要な位置・高さ・軸の向きが一本ずつ違います。

当院では、一本ずつの歯に、別々に位置の情報を与えられる方法として、MEAW を使っています。

奥歯の高さと、噛む面の傾きを整えるため

当院の矯正では、奥歯の上下の方向の位置を補正することを、第一の要点と考えています。

歯を横の方向に動かし終えたあとは、MEAW で、上下の方向の移動を行います。

横の方向だけでなく、上下の方向の動きまで一本ずつ調整できることが、MEAW を使う理由の一つです。

灰色の布の上に置いた、ループを曲げ込んだ矯正用のワイヤー
MEAW

治療の段階ごとに、曲げ方を変えられるから

ループが少なく、単純な形に近づいたワイヤー
単純な形に近づいたワイヤー

ワイヤーは、治療の段階ごとに曲げ直します。

仕上げに近づくほど、ワイヤーは、基本に沿った単純な形になっていきます。

入れ歯と、同じ噛み合わせの考え方だから

当院では、矯正でも、入れ歯でも、同じ噛み合わせの考え方で治療を組み立てます。

院長は、総入れ歯の人工歯の並べ方と、矯正のワイヤーの曲げ方には、多くの共通点があると説明しています。

その考え方は、シーケンシャルオクルージョンとオーストリアン・ナソロジーのページでご紹介しています。

咬合器に付けた上下の模型の上に、総入れ歯の人工歯を並べたところ(前から)
模型の上に並べた、総入れ歯の人工歯

当院での実際

治療の流れ

  1. 初診コンサルテーションで、お悩みとお口の状態を確かめ、必要な検査をご説明します。
  2. 矯正検査(噛み合わせの検査。2〜3回の通院が目安)で、骨格(ラテラルセファロ分析)、顎関節の動き(キャディアックス)、歯の模型(分割模型)、咬合器での噛み合わせなどを調べます。
  3. 検査・診断のうえ、治療計画とお見積を書面でお渡しします。
  4. 3回目の通院から、ワイヤーの調節が始まります。通院は、およそ1.5か月に1回です。
  5. ワイヤーは、段階ごとに、当院で曲げ直します。
  6. 歯を動かし終えたら、リテーナー(保定装置)で、歯の位置を保ちます。

矯正の期間は、2〜3年が目安です。症状や骨格によって、大きく異なります。

検査の結果、矯正を行わない判断になることもあります。

当院でワイヤーを曲げる

当院の MEAW は、その方の検査の結果と治療計画をもとに、当院で曲げたものです。

曲げるときは、先端の形を整えたプライヤー(ワイヤーを曲げる器具)を使います(→ プライヤーの先端加工)。

細かな接点は、顕微鏡で拡大して確かめます(→ 技工用の実体顕微鏡)。

動画:MEAWの曲げ方とポイント(YouTube)

違和感を減らす工夫

ループの部分に、黄色の線が書き込まれたワイヤー
黄色の線を書き込んだワイヤー

治療のあいだは、長い期間、ワイヤーを着けていただきます。

そのため、ループを、頬と舌の力がつり合う空間(ニュートラルゾーン)に収まるように曲げ、違和感をできるだけ減らす工夫をしています。

ループの先は、頬の筋肉の走る向きに沿わせて、少しずつ内側へ調整します。

それでも、治療の途中に違和感が出ることはあります。

ワイヤーのループの部分を、近くから写したもの
ループの部分(拡大)

折れにくくする工夫

小臼歯(前から4・5番目の歯)だけで噛んでいる段階では、ワイヤーに力が集まって、折れやすくなります。

そのため、曲げの角を直角にせず、大きな半径で曲げて、力が一か所に集まらないようにしています。

条件によっては、ワイヤーが折れることがあります。

曲げの角を丸くして、ループを曲げ込んだ矯正用のワイヤー
角を丸く曲げたMEAW

特定の歯の傾きを直す工夫

奥歯(大臼歯)の傾きを起こすときなど、特定の歯のために、ワイヤーに小さな輪(オメガループ)を加えることがあります。

上あごを横に広げるときの、補助のワイヤー

上あごの横幅を広げる必要があるときは、MEAW に加えて、マリガンワイヤーという補助のワイヤーを使うことがあります。

ループを曲げ込んだワイヤーと、それに沿わせたもう1本のワイヤー
MEAWと、補助のワイヤー

乳歯と永久歯が混ざっている時期

ループが1つだけ付いた、単純な形のワイヤー
第一大臼歯の高さを整えるワイヤー

乳歯と永久歯が混ざっている時期(混合歯列期)には、ループの少ない単純なワイヤーで、最初に生える大人の奥歯(第一大臼歯)の高さを整えることがあります。

1本のワイヤーに、輪のようなループを1つ曲げたもの
ループを1つ曲げたワイヤー

金属アレルギーのある方

金属アレルギーのため、通常のコバルトクロム製のワイヤーやブラケット、結紮線が使えなかった方に、チタン製のブラケットとワイヤー、ゴムでの固定に切り替えた例があります。

金属アレルギーがある方は、事前にお知らせください。

チタン製の、ループのある矯正用のワイヤーと、それを持つプライヤーの先端
チタン製の矯正用ワイヤー

MEAWでできること・できないこと

MEAWでできること

  • 一本ずつの歯を、前後・左右・上下と、傾きの方向に動かす
  • 歯の軸の向きを、一本ずつ整える
  • 歯を横に動かし終えたあと、上下の方向の位置を整える
  • 奥歯の噛む面の傾きに、働きかける
  • 治療の段階に合わせて、曲げ方を変える

できないこと・当院での補い方

できないこと当院での補い方
どこへ動かすか(治療の目標)を、ワイヤーだけで決めること検査の記録から計画を立てます(ラテラルセファロ分析・キャディアックス・ギルバッハ レファレンスSL咬合器)
上あごの横幅を広げること必要に応じて、補助のマリガンワイヤーを加えます
動かし終えた歯の位置を、そのまま保つことリテーナー(保定装置)で保ちます
寝ている間に、歯がどう当たっているかを知ることブラックスチェッカーで記録します
違和感や、ワイヤーが折れることを、なくすことループの位置と曲げ方を工夫しますが、起こることはあります。気になるときは、調整のときにお伝えください

MEAW についての研究をまとめた報告(2020年)では、研究の多くが症例報告などで、根拠の水準は低いとされています。

同じ報告では、MEAW による変化は主に歯と、歯を支える骨(歯槽骨)の範囲で、長い期間の安定性などは、さらに調べる必要があるとされています。

当院では、治療の途中や終わりにも、検査の記録を取り直して、一人ひとりの変化を確かめます。

治療の効果や期間には、個人差があります。

よくあるご質問

ワイヤーが複雑な形をしているのはなぜですか?

一本ずつの歯を、別々の向きに動かすためです。

歯と歯のあいだのループの形や角度で、それぞれの歯にかける動きを変えています。

ワイヤーが頬や舌に当たって、痛くなりませんか?

ループを、頬と舌の力がつり合う空間(ニュートラルゾーン)に収まるように曲げ、違和感を減らす工夫をしています。

それでも、治療の途中に違和感が出ることはあります。気になるところは、調整のときにお伝えください。

ワイヤーが折れることはありますか?

条件によっては、折れることがあります。

とくに小臼歯だけで噛んでいる段階では力が集まりやすいため、曲げの角を大きな半径にして、力が一か所に集まらないようにしています。

どのくらいの間隔で通いますか?

ワイヤーの調節は、3回目の通院から始まり、およそ1.5か月に1回です。

矯正の期間は2〜3年が目安で、症状や骨格によって大きく異なります。

金属アレルギーがあっても、治療できますか?

金属アレルギーのため通常のワイヤーやブラケットが使えなかった方に、チタン製のブラケットとワイヤー、ゴムでの固定に切り替えた例があります。

アレルギーがある方は、事前にお知らせください。

子どもにも使いますか?

乳歯と永久歯が混ざっている時期に、単純な形のワイヤーで、第一大臼歯の高さを整えることがあります。

始める時期は、歯の生え替わりや顎の成長、お口の状態によって異なります。

参考にした資料

一般的な説明(MEAW の名前・考案の経緯・一般的な形・研究のまとめ)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・説明によるものです。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

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