心拍変動とは

心拍変動(HRV)は、心拍と次の心拍までの間隔の、わずかな揺らぎのことです。

心電図から、心拍と心拍の間隔(R-R間隔)を一つずつ求めて調べます。

心拍の間隔は、いつも同じではありません。

その揺らぎには、自律神経である交感神経と副交感神経の働きが関わるとされ、研究では自律神経の働きを見る目安として使われています。

当院の診査項目では、「心拍変動による自律神経反射検査」にあたります。

当院は、噛み合わせと自律神経機能の関係を調べる研究に、心拍変動を使っています。

心拍変動は、体に起きている反応を記録する方法の一つです。

その値だけで、症状の原因や治療の効果を判断するものではありません。

心拍変動のしくみ

2026年の論文の研究をもとに、記録から解析までを4つの段階でご紹介します。

  1. 胸に電極を貼り、心電図を記録します。研究では、心電図と筋電図を同時に記録できる、無線の記録装置(テレメーター)を使いました。
  2. 心電図の波から心拍を一つずつ拾い、心拍と心拍の間隔(R-R間隔)を並べます。
  3. 間隔の揺らぎを、速い揺らぎとゆっくりした揺らぎに分けます(周波数ごとに分ける解析)。
  4. 速い揺らぎの成分(HF)と、ゆっくりした揺らぎの成分(LF)の大きさ、LF を HF で割った値(LF/HF)を求めます。
心拍の波形を表示した記録画面(青い矢印が心拍の波)
心拍の記録画面(青い矢印が心拍の波)

解析には、研究のために共同研究者が作ったプログラム(MATLAB)を使っています。

2026年の研究では、それぞれの値を次のように使いました。

値(揺らぎの速さ)研究での使い方
HF(0.15〜0.4Hz の速い揺らぎ)副交感神経の働きの指標
LF(0.04〜0.15Hz のゆっくりした揺らぎ)交感神経と副交感神経の両方が表れる成分
LF/HF(LF を HF で割った値)交感神経の働きの指標
筋電図と心電図を同時に記録する設定画面
筋電図と心電図を同時に記録する設定画面

当院が心拍変動を測る理由

体を動かしている間の反応を記録するため

歯ぎしりの動きをすると、頭や顎が動きます。

心拍変動は、その動きによる記録の乱れを受けにくいため、研究では、歯ぎしりをしている間の反応を見る方法として選びました。

記録する時と対象の違う方法を、組み合わせるため

同じ研究では、歯ぎしりをしている間を心拍変動で、歯ぎしりの直後を瞳孔反射で記録しました。

噛む筋肉の活動は、筋電図で記録しました。

それぞれ、記録する時と対象が違います。

院長は、一つの値だけではなく、いくつかの記録を合わせて検討しています。

イリスコーダ デュアルの、両目に当てるゴーグル形の測定部とベルト
瞳孔反射を記録する、イリスコーダ デュアルの測定部

反応を、数値と波形で確かめるため

院長は、噛み合わせと自律神経の反応の関係を、数値や波形として調べてきました。

現在は、明治大学の研究室で、瞳孔反射と心拍変動から自律神経の反応を解析しています。

当院での実際

研究での記録

2026年の論文の研究では、健康な成人の協力者17名について、次の順番で心電図を記録しました。

  1. 暗く静かな部屋の椅子に座り、胸に心電図の電極を付けます。
  2. 20分間、そのまま静かに過ごします。その最後の300秒間の心拍変動を、比べるときの基準にします。
  3. 歯に取り外しのできる金属の装置(メタルオーバーレイ)を着けて、噛み合わせの条件を一時的に変えます。
  4. 下あごを左右に動かす歯ぎしりの動きを30秒間行い、そのあいだの心電図を記録します。
  5. 装置を付け替え、もう一つの噛み合わせの条件でも同じように記録します。

2018年の論文の研究では、健康な男性11名の睡眠中を、睡眠実験室で記録しました。

記録のしくみには、心電図のほか、筋電図・脳波・加速度センサー・赤外線カメラが含まれていました。

診療での記録

診療では、顎関節症の詳しい検査で必要と判断した患者さんに、心拍変動を記録することがあります。

どなたにも行う検査ではなく、症状や状態によって選びます。

必要に応じて、瞳孔反射や筋電図など、記録する対象の違う方法と組み合わせます。

心拍変動で分かること・分からないこと

分かること

  • 心拍と次の心拍までの間隔(R-R間隔)
  • その間隔が、時間とともにどのように揺らいでいるか
  • 揺らぎの速い成分(HF)とゆっくりした成分(LF)の大きさ、LF/HF
  • 決められた条件の中で、安静時の基準と、歯ぎしりをしている間の記録がどう違うか

分からないこと・当院での補い方

分からないこと当院での補い方
LF/HF だけで、交感神経と副交感神経の関係を正確に決めること一つの値だけで判断せず、瞳孔反射などの記録と合わせて見ます
測る時間の長さ・年齢・性別などの条件が違う記録どうしの比べ方研究では、同じ人の安静時の記録(最後の300秒)を基準にして比べました
噛む筋肉の活動筋電図
顎関節の動きキャディアックス
頭痛・肩こり・眠りにくさなど、症状が起きている理由心拍変動の値からは決めません。医科での評価が役立つこともあります

2026年の研究では、LF/HF を交感神経の働きの指標として使いました。

一方で、LF/HF が交感神経と副交感神経の関係を正確に表すかどうかには、研究者の間で議論があります。

論文で記録したのは、装置で噛み合わせの条件を一時的に変えたときの反応です。

長い期間続いている噛み合わせの状態との関係を示すものではなく、さらに研究が必要とされています。

研究で調べている関連と、一人ひとりの症状が起きている理由や治療による変化は、分けて考える必要があります。

心拍変動の値だけで、症状と噛み合わせを結びつけることはできません。

よくあるご質問

心拍変動は、心拍数と同じものですか?

同じではありません。

心拍数は1分間の心拍の数ですが、心拍変動は、一つの心拍から次の心拍までの間隔が、どのように揺らいでいるかを見ます。

HF、LF、LF/HF とは何ですか?

HF と LF は、心拍の間隔の揺らぎを、速さ(周波数)ごとに分けた成分です。

LF/HF は、LF を HF で割った値です。

2026年の研究では、HF を副交感神経、LF/HF を交感神経の働きの指標として使いました。

心拍変動だけで、自律神経の状態がすべて分かりますか?

一つの値だけで、自律神経の状態全体を決めることはできません。

とくに LF/HF の解釈には議論があるため、測った条件やほかの記録と合わせて見ます。

歯ぎしりをしている間も記録できますか?

2026年の研究では、歯ぎしりの動きをしている間の心電図を記録しました。

頭や顎の動きによる記録の乱れを受けにくいことが、心拍変動を選んだ理由です。

すべての患者さんが受ける検査ですか?

いいえ。

症状や状態を確認して、必要な検査を選びます。

参考にした資料

心拍変動の一般的な説明に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の投稿・論文・説明によるものです。

相談・お問い合わせ

医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00

初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。

噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。

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