パラレルミーリングとは
パラレルミーリングは、ミーリングマシン(平行切削器)を使って、入れ歯の部品の面を、入れ歯を着け外しする方向に平行にそろえて削る技術です。
「パラレル」は平行という意味で、「平行性の調整」ともいいます。
一般に、アタッチメント(入れ歯と支える歯をつなぐ装置)を使って、取り外しのできる入れ歯などをつくるときに行う技術とされています。
当院では、入れ歯の側の部品だけでなく、入れ歯を支える歯にかぶせる冠(アタッチメントのついた冠)も、ミーリングマシンで形を整えます。
ジルコニアの削り出しとの違い
ジルコニアのかぶせ物を、データから機械で削り出す作業も、同じ「ミーリング」という言葉で呼ばれます。
パラレルミーリングの目的は、形を削り出すことではなく、面の向きを、着け外しの方向にそろえることです。
ジルコニアの削り出しは、ジルコニアのかぶせ物のページでご説明しています。
パラレルミーリングのしくみ
しくみを、4つの段階に分けてご紹介します。
- 着け外しの方向を決める:入れ歯を入れる方向と外す方向を、模型の上で決めます。
- 模型をミーリングマシンに取り付ける:決めた方向と、削る工具の向きが合うように、模型を台に固定します。
- 面を削りそろえる:ワックスでつくった形や、それを金属に置き換えたもの(鋳造体)の面を、決めた方向に平行に削ります。
- 入れ歯の通り道ができる:そろえた面に入れ歯の部品が沿うことで、入れ歯は決めた方向に出し入れされるようになります。
面をそろえると、何が変わるのか
部分入れ歯で、入れ歯が決まった方向に出入りするように、支える歯の側につくる面を、一般に「ガイドプレーン(誘導面)」と呼びます。
ガイドプレーンは、一般に、入れ歯の着け外しをしやすくし、支える歯にかかる横向きの力を減らし、入れ歯の安定に働くとされています。
補綴(失った歯を補う治療)の学会誌でも、支える歯の面と入れ歯の部品が接することで、入れ歯の動く方向が限られることが説明されています。
つまり、面をどの向きにそろえるかで、入れ歯が出入りする方向が決まります。
当院がパラレルミーリングを使う理由
入れ歯は、毎日ご自身で着け外しするものだから
入れ歯は、患者さんご自身が、毎日お口から出し入れするものです。
入れ歯を使うときのなめらかさや確かさは、着け外しの方向をどこまで細かく整えたかに左右される、というのが院長の考えです。
支える歯に、根の方向へ力を伝えたいから
歯と歯の間の歯がない所を補う部分入れ歯は、噛むと、歯と同じように根の方向へ沈みます。
そのとき、残っている歯にも根の方向へ力が伝わるように、アタッチメントの形をミーリングで整えます。
支える歯と、歯のない所の粘膜との沈み込みの違いについては、アタッチメントのページでご説明しています。
仮の入れ歯でも、同じしくみを確かめるため
当院では、最終的な入れ歯の前に、仮の入れ歯(仮義歯)を使っていただくことがあります。
仮義歯は、最終的な入れ歯が予定どおりに働くかを、使いながら確かめるためのものです。
そのため仮義歯にも、最終的な入れ歯と同じしくみを持たせるよう、パラレルミーリングを行います。
工程の精度を、積み重ねるため
入れ歯は、設計、ワックス、鋳造、ミーリングと、いくつもの工程を重ねてつくります。
一つひとつの工程の精度を積み重ねることを大切にしている、というのが院長の考えです。
当院での実際
入れ歯づくりの中での位置
パラレルミーリングは、入れ歯の設計にもとづいて、部品をつくる工程の中で行います。
仮の入れ歯をつくるときにも、最終的な入れ歯をつくるときにも行います。
入れ歯づくり全体の流れは、アタッチメントのページでご紹介しています。
支える歯の冠から設計する
当院では、入れ歯を支える歯にかぶせる冠(差し歯)の段階から、入れ歯と合わせて設計することがあります。
支える歯の冠の面も、入れ歯の部品の面も、同じ着け外しの方向にそろえてつくります。
仮の入れ歯で
仮の入れ歯(仮義歯)をつくるときも、模型をミーリングマシンに取り付けて、最終的な入れ歯と同じように面をそろえます。
仮義歯を使っていただきながら、着け外しの感覚や、噛んだときの働きを確かめ、最終的な入れ歯に生かします。
仮義歯について詳しくは、仮歯・仮義歯のページをご覧ください。
ほかの技術との組み合わせ
- アタッチメント:ミーリングで面をそろえる部品の一つです。入れ歯と支える歯をつなぎます。
- 鋳造:ワックスでつくった形を、金属に置き換えます。
- レーザー溶接:金属の部品の接合や、使い始めてからの修理に使います。
- 仮歯・仮義歯:最終的な入れ歯と同じしくみを、使いながら確かめます。
パラレルミーリングでできること・できないこと
パラレルミーリングでできること
- 入れ歯を着け外しする方向を決め、部品の面をその方向にそろえること
- 支える歯の冠と入れ歯の部品の面を、同じ方向にそろえてつくること
- 支える歯に伝わる力の向きを、アタッチメントの形で整えること
- 仮の入れ歯にも、最終的な入れ歯と同じしくみを持たせること
できないこと・当院での補い方
| できないこと | 当院での補い方 |
|---|---|
| 入れ歯の使い心地を、ミーリングだけで決めること | 顎の動き(キャディアックス)や、入れ歯を支える粘膜の形(粘膜の記録)も記録し、設計に合わせます |
| 模型の上で決めた方向が、お口の中でも合うかを、模型だけで確かめること | 仮の入れ歯を使っていただき、確かめます |
| 支える歯への負担を、なくすこと | 根の方向へ力が伝わるように形を整え、使い始めてからも点検と手入れを続けます |
| 使ううちに起こる、歯や粘膜の変化を止めること | 経過を確かめ、調整や修理(レーザー溶接)、作り直しを検討します |
入れ歯の主なリスク・副作用には、慣れるまでの違和感、調整の必要、経年での作り直しがあります。
治療後の状態は、全身やお口の環境の変化、経年による劣化などの影響を受けることがあります。
よくあるご質問
- パラレルミーリングでは、何を平行にするのですか?
入れ歯の部品や、支える歯の冠の面です。
入れ歯を着け外しする方向を決め、その方向と平行になるように、面を削りそろえます。
- 仮の入れ歯でも行うのですか?
はい。仮の入れ歯(仮義歯)にも、最終的な入れ歯と同じしくみを持たせるために行います。
仮義歯を使っていただきながら、そのしくみが予定どおりに働くかを確かめます。
- ジルコニアのかぶせ物を削り出す「ミーリング」と同じですか?
同じ言葉ですが、目的が違います。
ジルコニアの削り出しは、データから形をつくる作業です。
パラレルミーリングは、入れ歯の部品の面の向きを、着け外しの方向にそろえる作業です。
- 支える歯への負担は、なくなりますか?
なくなるとは言えません。
支える歯に根の方向へ力が伝わるように形を整えますが、入れ歯を使い始めてからも、歯と入れ歯の状態を確かめていきます。
- ミーリングマシンとは、どんな機械ですか?
模型の上の部品を、決めた方向に平行に削るための機械(平行切削器)です。
当院では、仮の入れ歯の模型も、この機械に取り付けて面をそろえます。
関連する技術・治療
- アタッチメント:入れ歯と支える歯をつなぐ装置
- レーザー溶接:金属の部品の接合と修理
- 鋳造:ワックスの形を金属に置き換える
- 仮歯・仮義歯:最終的な形を、使いながら確かめる
- 使用している技術の一覧
- 入れ歯(精密義歯)
参考にした資料
一般的な説明(ミリングの手法・ガイドプレーン・部分入れ歯の動き方)に、次の公開資料を参考にしました。当院のやり方は、院長の説明によるものです。
- OralStudio歯科辞書「ミリングテクニック(アタッチメントの)」
- クインテッセンス出版『歯科用語小辞典(臨床編)』「ガイドプレーン」
- 山下秀一郎「パーシャルデンチャーの力学を再考する 残存歯の保護を第一とした動かない義歯」日本補綴歯科学会誌 12巻1号, 2020
相談・お問い合わせ
医療法人社団 耆婆会 吉見歯科医院
〒194-0001 東京都町田市つくし野1-29-1 スクエア2 302(3階)
TEL 042-795-1359 FAX 042-795-1398
診療日: 月・火・木・金 10:00–13:00 / 14:30–18:00
初診は、検査と診断を行う初診コンサルテーション(自由診療・30分〜1時間)から始まります。他院での診断についてのご相談も、この中でお受けします。
噛めない、症状が強いなど緊急の場合は、お電話(042-795-1359)でご相談ください。






